大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 どきっとした。言われてみればそうかもしれない。
 仕事以外のことを考えたくない気持ちが強いあまり、無の状態になっていた気がする。
 美空は短く挨拶すると、瀧上に追及される前にオペセンを出た。
 仕事中は切っていたスマホの電源を入れる。とたん、タイミングを見計らったかのように電話がかかってきた。
 表示されている名前を見たとたん、美空は反射的に着信を切った。履歴をよく見れば、何度か着信があったらしい。

(なんの用があるっていうのよ)

 仕事中は忘れていられたのに、またしてももやもやした気分がこみ上げてくる。でもなぜこんなにも引っかかるのだろう。
 自分で自分に首を捻っていると、またスマホが鳴りだした。
 無視を決めこむつもりだったが、鳴りっぱなしの着信音に周りからの視線が集まる。
 美空はしかたなく通話ボタンをタップした。

『やっと繋がった』

 声が尖っている。
 いつもクールな朋也が声にまで感情をにじませるのは珍しかった。

「――っ、なんですか? お急ぎの用件ですか」 
『今どこ? 仕事終わり?』
「えっ……はい。オペセンを出たところです……が?」

 勢いに気圧され、うっかり素直に答えてしまったあとでわれに返る。
 しかしなにか言おうと口を開いた美空よりも先に、朋也が畳みかけた。

『そこから動かないで。待ってて』
 
 動かないでと言われても困る。
 美空が返答しかけたときには電話は切れていて、美空は呆然とオペセンのフロア内のエレベーターホール前で立ち尽くした。
 おなじ早番の社員が次々に美空を追い越し、エレベーターに乗りこんでいく。
 乗りこんだ社員からけげんな目を向けられ、美空は手振りで自分は乗らないと示した。

(でも、帰りたい)

 平気な顔をして、朋也と顔を合わせられる自信がない。