大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 いつかのように、美空は羽田のターミナル内を到着ロビーへ向かう。もうすぐ目当ての便が到着するかと思うと、自然と早足になった。
 連絡が来たのは三日前の夜で、メッセージではなく電話だった。驚きうろたえる美空に、朋也は直近のオフの日を尋ねた。
 心の準備もないまま正直に勤務予定を伝えると、朋也は『ちょうどいい』と嬉しそうに言った。

『見せたいものがあるから羽田まで来て』

 電話口では、なにを見せるのか朋也は言わなかった。
 美空も深くは尋ねなかったが、気にならないといえば嘘になる。
 AP203便は遅延もなく、予定どおり着陸したようだ。電光掲示板を見あげ、まずそのことにほっとした。
 もう駐機スポットに着いただろうか。
 到着ゲートをちらちらと見ながら、美空は足を早めた。
 折り返しの便に乗務する場合など、クルーは到着ゲートを利用しない。だが今日の朋也はこの便が最後だ。ここで待つのが確実だった。
 手荷物受け取りの必要のない乗客が、早くもロビーに姿を現している。クルーが降りるのは、当然ながら最後だ。
 美空は降りてくる客の邪魔にならないよう端に寄った。団体客が乗っていたようで、彼らは到着ゲートを出たところで集まっている。
 急ぐほどのことはなかった、と美空は自嘲をこめて息をととのえた。特段、なにがあるというわけでもないのに。
 最近、なんだかおかしかった。
 朋也と接していると、妙に心がふわふわするときがあるのだ。
 少し前までは、朋也を前にするたびにコンプレックスを引きずりだされ、心が波立った。

(それがどうして……?)

 コンプレックスがなくなったわけではない。
 だが、それとは別に……もっと胸の奥のほうがどうにも落ち着かなかった。少しのきっかけで騒ぎだす。