大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 さいわい、瀧上は美空の嘘を信じたらしくすんなりと引き下がった。本社ビルに着き、セキュリティーチェックを通ってエレベーターに乗りこむ。

「受付にまでクリスマスツリーか」
「わたしたちには、クリスマスを飛び越えてお正月のほうが重要ですよね。帰省客も増えますし」

 帰省客は大いにありがたいが、年末年始は天候も崩れやすくイレギュラーな対応が増えがちなのだ。
 想像してげんなりする瀧上に笑いながら、なにげなくエレベーターのドアを見やる。と、ちょうど乗りこんできた人物に美空はどきっとした。
 朋也だ。パイロットの制服をきっちりと着こなしているので、乗務直前か、あるいは直後だろうか。
 しかしその視線は普段と違い、心なしか険しい。どうしたのかとけげんに思ったが、朋也はすぐその険しさを表情から消した。

「木崎さん。お疲れ。今日はこれから?」
「はい、夜勤なんです」

 エレベーターにはほかにも数名が乗りこみ、美空たちは必然的に奥へ追いやられる。隣に瀧上が、朋也は瀧上の一歩前あたりに立った。
 朋也の顔を見るのは食事をして以来で、かすかに緊張する。そのくせ、なぜか鼓動が速まっていく。
 美空は自身の不可解な反応に首をひねり、表情を引きしめた。

「沖形さんはどうしてこちらに?」
「遅延便の影響で羽田の部屋が埋まったから、こっちでデブリをすることになったんだ。デブリ後はさらに成田へ移動して、そこから上海」
「息つく暇もないですね」

 なんでもないことのような口ぶりだが、パイロットは体力勝負な仕事なのだとあらためて思い知らされる。
 少しでも休めるとよいのに、と美空はさっき見えた険しい顔を思い出す。あれは過密スケジュールの疲れによるものかもしれない。
 朋也が口を開きかける。
 しかし、急にその表情が見えなくなった。瀧上が立ち位置をずらしたのだ。