長く使っているお気に入りのコートだが、小柄な美空が着ると学生風に見えてしまうのが、最近は妙に気になっていた。年相応の女性に見えるよう、そろそろ新調したほうがいい気がする。
(おかしいな……職場と家を往復するだけなんだから、通勤服なんて気にしたことなかったのに)
「朝から難しい顔をしているな」
「あっ、いえ、今日も夜勤なので、気合いを入れ直していただけです。それよりさっき調べた限りでは、アジアはどこも天気がよさそうでしたよ」
瀧上は美空の指導者でもあるため、シフト勤務では彼とペアを組む機会が多い。
今日も、通勤電車を降りたホームで鉢合わせしたのだった。お互いにこれから夜勤だ。
美空は本社へと足を運びながら、瀧上に天気予報を見せようとしてスマホを出す。
ところが、横からスマホを覗きこんだ瀧上は別のものに目を留めた。
「この写真……こんな場所、羽田にあった? いや、羽田じゃないな。これは?」
瀧上が指したのは、スマホのホーム画面だった。
朋也にもらった、朝の滑走路の光景を写した写真だ。
さすが瀧上はディスパッチャーだけあって、見破るのも早い。隠し立てする必要もないのに、美空はうろたえた。
「しかもこれ、コクピットか? 絶景じゃないか。木崎、どうやって入手したんだ?」
「あ、っと……父、父です! 昔の写真を送ってくれて」
「ああそうか、親父さんは元パイロットだと言っていたな。さすがうまく撮れてる。これ、俺もほしい」
「っ、すみません。父に、外部に出すなと言われているので」
とっさにそう言ってスマホを閉じたあとで、美空はかすかなうしろめたさを覚えて身じろいだ。
自分でも、なぜそうしたのか説明がつかない。
嘘をついたのも、写真をシェアすることを拒否したのも。そしてなぜ動揺しているのかも。
(おかしいな……職場と家を往復するだけなんだから、通勤服なんて気にしたことなかったのに)
「朝から難しい顔をしているな」
「あっ、いえ、今日も夜勤なので、気合いを入れ直していただけです。それよりさっき調べた限りでは、アジアはどこも天気がよさそうでしたよ」
瀧上は美空の指導者でもあるため、シフト勤務では彼とペアを組む機会が多い。
今日も、通勤電車を降りたホームで鉢合わせしたのだった。お互いにこれから夜勤だ。
美空は本社へと足を運びながら、瀧上に天気予報を見せようとしてスマホを出す。
ところが、横からスマホを覗きこんだ瀧上は別のものに目を留めた。
「この写真……こんな場所、羽田にあった? いや、羽田じゃないな。これは?」
瀧上が指したのは、スマホのホーム画面だった。
朋也にもらった、朝の滑走路の光景を写した写真だ。
さすが瀧上はディスパッチャーだけあって、見破るのも早い。隠し立てする必要もないのに、美空はうろたえた。
「しかもこれ、コクピットか? 絶景じゃないか。木崎、どうやって入手したんだ?」
「あ、っと……父、父です! 昔の写真を送ってくれて」
「ああそうか、親父さんは元パイロットだと言っていたな。さすがうまく撮れてる。これ、俺もほしい」
「っ、すみません。父に、外部に出すなと言われているので」
とっさにそう言ってスマホを閉じたあとで、美空はかすかなうしろめたさを覚えて身じろいだ。
自分でも、なぜそうしたのか説明がつかない。
嘘をついたのも、写真をシェアすることを拒否したのも。そしてなぜ動揺しているのかも。



