大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

(どうせならコクピットからの景色を送ってくれれば……って、待って、なんでそんなこと)

 美空はそそくさとアプリを閉じる。だが少し迷ったのち、ふたたびアプリを立ちあげた。
 美空の発言を受けて義務感で送ってくれたのなら、礼くらいは言うべきだろう。

【写真ありがとうございます。B737-800は、いい顔をしてますね】

 このあと朋也は関空から戻るのか、それとも別の地方空港に飛ぶのだろうか。
 関わりたくないはずだった朋也を気にしている。その理由を考えているうちに、返信がきた。

【その感想、パイロットかと思った。ひょっとして操縦経験があるんじゃない?】

 冗談に笑ったあとで、苦笑いでも皮肉をこめた笑いでもない、素直な笑いだったことに美空は驚いた。
 よりによってパイロット呼ばわり。以前の美空だったら、タチの悪い冗談だと憤慨しただろう。
 しかし自分でもふしぎなことに、以前ほど気にならない。

【実は毎日百便ほど飛ばしています】
【大ベテランだ。詳しく聞きたいな】

 話すほどのことはないと返そうとして、美空は思い直した。

【それは次にお会いしたときにします】


 
 十一月中旬ともなれば、街はクリスマスムード一色になる。
 ファッションビルのショーウィンドウに飾られたきらびやかなツリーが目に入り、美空は感嘆と(わび)しさのまじった息を吐いた。
 恋人たちにとっては心の浮き立つ季節の到来かもしれないが、美空にはクリスマスなんてどこか遠い世界のイベントだ。
 それよりも、冬は降雪のほうを気にしてしまう。

「寒いな……北のほうは、いよいよ本格的に雪が降りそうだな」

 隣を歩く瀧上も、考えることはやはり業務がらみのようだ。
 滑走路上空が吹雪く様子を想像して、美空はキャメル色のPコートの前をかき合わせる。