大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 夜勤明け。美空と同様に仕事を上がったばかりの瀧上から食事に誘われた。
 この時間だと、食事といっても朝食だ。
 しかし、肌のゴールデンタイムに睡眠を取らなかった顔なんて、とうてい見られたものではない。
 なにより、食い気よりも眠気のほうが勝っている。美空は「また今度にさせてください」と笑って断ると本社ビルを出た。
 秋の乾燥した空気のせいもあってか、肌がガサガサだ。CAの女性はどうやって、機内の乾燥した空気のなかで美肌を維持しているのだろう。
 これから出社らしいビジネスマンの波に逆らって駅へと歩きながら、美空は苦笑した。これまで気にもしなかったのに、CAの美容法が気になるなんてどうかしている。
 それでもやっぱり気になって頬を触っていると、バッグの中でスマホが振動した。

 スマホを取り出して画面を表示させると、メッセージアプリの通知に朋也の名前が表示されていた。
 送られてきた写真を見るなり、くすりと笑いが漏れる。
 二枚目の写真は関西国際空港からの朝日だった。
 苦笑が出たのは、関空の写真なら美空も相当数を持っているからだ。まだ母が生きていたころ、ふたりでよく父の操縦する機体を見にいった。
 おかげで写真と同時に送られた【AP76乗務】というメッセージの、沖縄ー大阪の便名を見なくても場所を特定できたくらいである。
 ただ、今回はコクピットからの景色ではなかった。しかも珍しく、下から見あげた機体の頭部が映りこんでいる。
 降機した直後なのかもしれない。
 写真を撮るタイミングがなく、降機したあとで慌てて撮ったのではないだろうか。
 
 そうまでして美空が好きだと言った時間帯の空を撮ってくれたのかと思うと、苦笑は徐々になんともいえない表情に変わった。