大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 パソコンを操作し、気象図を瀧上と共有する。瀧上がひととおり確認して燃料の搭載量を修正する。

「それにしても木崎は最近、気合いが入ってるな」
「えっ、そう見えますか?」
「見えるよ。休憩中も勉強してるよな。どうした?」
「そ、そんな大したことでは……前から勉強してましたよ」

 美空は気恥ずかしい気持ちをごまかして笑ったが、たしかにこれまでよりやる気が満ちている自覚はある。
 担当地域が増えて、業務量の多さに悲鳴を上げてもおかしくないはずなのに、受けて立つと思っている自分がいる。
 集中力も上がり、帰宅してからの勉強もはかどっていた。

「さては、いいことがあった?」
「いいこと、というか……この仕事が好きだなと思ったんです。いえ、前から好きではあったんですけど、あらためて運航支援者になれてよかったなと思いまして」
「へえ……木崎にそんないい顔をさせたのは、なにがきっかけ? 気になるな」

 美空は思わず頬を触った。
 ほんのり熱を持っている。そんなにわかりやすい顔をしていたとは思わなかった。でも、いい顔だと言われて悪い気はしない。

「たいそうなきっかけではなくて……ただ褒められただけなんですけど、嬉しくて」
「その顔は……ひょっとして男? 恋人だったりする?」
「そんなわけないですよ!」

 美空は慌てて手振りで否定した。断じて恋人などではない。朋也ならいくらでも相手がいるだろうし、美空などお呼びではない。
 美空も、心を乱される相手と付き合うなんてあり得ない。
 ただ、以前より少しだけ……トラウマという傷口を引っかかれる痛みが減ったというだけだ。

「この仕事をしているとそんな暇がないことは、瀧上さんだってよくご存じじゃないですか」
「だよな。出会いといえば、オペセンの中くらいのものか」

 瀧上が納得したのかうなずいて業務に戻る。美空も頭を切り替えた。
 だからそのとき、瀧上がどんな表情で美空を見ていたのか気づかなかった。