大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

「兄貴がオーロラを見た目玉をくれるならいいけど、そうじゃないならふざけんな、とね。ガツンときたな」
「おふたりとも、発想が極端ですね」

 朋也が笑う。
 その笑みが思いがけなくやわらかくて、自分に向けられたものではないのにどきっとした。

「ともかく、自分の目で見たいなら死ぬまでに連れていってやるしかないと気づいたんだ。だからパイロットになった。機内から見れば、病人でも寒さを感じずに見られるしね」
「え、ええ? 話が飛躍してません?」
「そのときは、それが確実だと思ったんだ」

 パイロットは簡単になれる職業ではない。客として飛行機に乗るほうが早いだろう。大多数の人間はそちらを選ぶ。
 なのに、そこでパイロットになるという発想がさらりと出ることに驚いた。朋也はなんでもないことのように言うが、きっとほかの誰でもなく自分の手でなんとかしたかったのだ。
 朋也の姿勢は、淡い憧れから空を目指した美空とはまったく違う。
 これが、パイロットになれる人間となれない人間の差なのだろうか。
 だとしたらそれは、ほんの数センチ足りなかった身長の差よりも、もっと大きな差のようにも思えた。

(敵わないな)

 どうあがいても、美空では誰かを――家族を喜ばせることなどできなかったのかもしれない。

「なんか……沖形さんが眩しいです」

 憧れという光は、眩しくて綺麗だと思うのに苦しくて、なるべく関わりたくなかった。
 その光のそばにいると、自分に影が差すのを否応なしに意識させられる。できなかった自分をまざまざと思い知る。
 とっくにこだわりを捨てたはずなのに、直接目にしなければその活躍を素直にサポートできるのに、それができなくなる。

(ああ、こんなことを考える自分が嫌)

 朋也が言葉の意味を尋ねたそうにするのを制し、美空は「今のは忘れてください」と手をひらひらさせた。