「あらためて……先日はありがとうございました」
ステーキの最後のひと切れを心ゆくまで味わったあと、美空は朋也に向き直った。
「俺は言いたいことを言っただけだよ」
「でも、わたしは言葉に詰まったままでしたから。やはり現役パイロットの言葉のほうが説得力もありますし、あれでうちの会社の印象もだいぶ変わったと思います」
「もしかしてさ、木崎さんは自分の仕事が嫌い?」
朋也がカウンターに軽く頬杖をついて美空の目を覗きこんでくる。
どきりとした。
「……まさか。一日に何百便ものフライトの飛行計画を一手に引き受けているんです。嫌いだったら続けていられません」
だからこそ朋也の姿が目に入ると、自分の仕事に純粋な気持ちを持てなくなるから嫌なのだ。
「なら『パイロットの言葉のほうが』なんて言わずに、自分の言葉に自信を持ってよ。俺たちが安心して飛べるように」
「あ……すみません。花形のパイロットと比べると、どうしても学生の言うことを否定できなくて」
「俺はさ」
と、朋也が声の沈んだ美空を遮るように切り出した。
「大学を出て、就活で初めてパイロットという職業を考えたんだよね。ちょうどそのころ中学生だった弟がちょっとした病気にかかって、覚悟をしてくれなんて言われて」
「え……」
さらりと言われたが、重い話にとっさに言葉が出ない。だが、朋也の弟は現在は大学生だと聞いたのを思い出した。
「弟が病院のベッドで『おれ、死ぬ前にオーロラが見たい。連れていってくれ』って言うんだ。健康な人間でも見る機会がほとんどないのに、これは難題だと思ったよ。病人を、オーロラが発生する極寒の地に連れていけるわけもない」
「それで……?」
「それで、俺が代わりに見てやると言ったら殴られた」
朋也がわざとらしく頬をさするのにつられて、くすりと笑みが漏れた。
ステーキの最後のひと切れを心ゆくまで味わったあと、美空は朋也に向き直った。
「俺は言いたいことを言っただけだよ」
「でも、わたしは言葉に詰まったままでしたから。やはり現役パイロットの言葉のほうが説得力もありますし、あれでうちの会社の印象もだいぶ変わったと思います」
「もしかしてさ、木崎さんは自分の仕事が嫌い?」
朋也がカウンターに軽く頬杖をついて美空の目を覗きこんでくる。
どきりとした。
「……まさか。一日に何百便ものフライトの飛行計画を一手に引き受けているんです。嫌いだったら続けていられません」
だからこそ朋也の姿が目に入ると、自分の仕事に純粋な気持ちを持てなくなるから嫌なのだ。
「なら『パイロットの言葉のほうが』なんて言わずに、自分の言葉に自信を持ってよ。俺たちが安心して飛べるように」
「あ……すみません。花形のパイロットと比べると、どうしても学生の言うことを否定できなくて」
「俺はさ」
と、朋也が声の沈んだ美空を遮るように切り出した。
「大学を出て、就活で初めてパイロットという職業を考えたんだよね。ちょうどそのころ中学生だった弟がちょっとした病気にかかって、覚悟をしてくれなんて言われて」
「え……」
さらりと言われたが、重い話にとっさに言葉が出ない。だが、朋也の弟は現在は大学生だと聞いたのを思い出した。
「弟が病院のベッドで『おれ、死ぬ前にオーロラが見たい。連れていってくれ』って言うんだ。健康な人間でも見る機会がほとんどないのに、これは難題だと思ったよ。病人を、オーロラが発生する極寒の地に連れていけるわけもない」
「それで……?」
「それで、俺が代わりに見てやると言ったら殴られた」
朋也がわざとらしく頬をさするのにつられて、くすりと笑みが漏れた。



