「好みを聞いてから店を決めたほうが、よかったんだろうけど。ここんとこ中国便が多かったから、和食が恋しくて。木崎さんは嫌いなものはある?」
「な……ないです、けど」
「安心した。和食全般無理って言われたら、大将にパスタをお願いする覚悟でいたんだ。和食割烹っていっても、堅苦しく考えなくていいから。ふつうにフレンチかと思うような前菜も出るしね」
「いえ、あの」
「お酒は飲める? ここ、日本酒が豊富なんだけどいける口? 珍しいのも置いてあるから、飲めるなら試してみて」
「いや、ですから」
「あ、なに? 帰りは送っていくから心配しなくていいよ。俺も明日は成田にスタンバイだから、そのまま成田近くのホテルに泊まろうかな」
「沖形さん!」
このひとは相変わらず、自分のペースでどんどんと進めてしまう。
美空が声を張ると、ようやく朋也がメニューから顔を上げた。
「なに?」
「食事をするなんて、ひと言もおっしゃらなかったじゃないですか。わたしはただ、先日のお礼を言いたいとお伝えしただけです」
美空は仕事帰りで、シンプルなニットとワイドパンツという完全にオフィス仕様の出で立ちだ。
モダンな割烹料理店では浮いてしまう。化粧直しもしていない。
(……じゃなくて!)
そもそも、朋也と食事をしようだなんて考えもしなかったのに。
「まあ野暮なことはなしで。腹が減ってるんだ、とりあえず食おう。まずは俺のお勧めを適当にみつくろってもいいかな」
美空が根負けすると、朋也はお酒と料理を勝手知ったる様子で注文していく。常連なのかもしれない。
朋也の機嫌は、美空がこれまで見たなかでいちばんよさそうに見えた。
朋也は飲まなかったが、美空は一杯だけ日本酒をいただいた。
すっきりとしているのにまろやかな味わいが口に広がると、美味しい食事のおかげもあって肩の力が抜けていく。
先付の柿と胡桃の白和え、椀ものは蕪と海老の菊花仕立て、お造りに松茸と野菜の天ぷら。
さらに近江牛のサーロインステーキが続くころには、感嘆のため息とともに漏れる感想も、ただただ「美味しい」ばかりになっていた。
「な……ないです、けど」
「安心した。和食全般無理って言われたら、大将にパスタをお願いする覚悟でいたんだ。和食割烹っていっても、堅苦しく考えなくていいから。ふつうにフレンチかと思うような前菜も出るしね」
「いえ、あの」
「お酒は飲める? ここ、日本酒が豊富なんだけどいける口? 珍しいのも置いてあるから、飲めるなら試してみて」
「いや、ですから」
「あ、なに? 帰りは送っていくから心配しなくていいよ。俺も明日は成田にスタンバイだから、そのまま成田近くのホテルに泊まろうかな」
「沖形さん!」
このひとは相変わらず、自分のペースでどんどんと進めてしまう。
美空が声を張ると、ようやく朋也がメニューから顔を上げた。
「なに?」
「食事をするなんて、ひと言もおっしゃらなかったじゃないですか。わたしはただ、先日のお礼を言いたいとお伝えしただけです」
美空は仕事帰りで、シンプルなニットとワイドパンツという完全にオフィス仕様の出で立ちだ。
モダンな割烹料理店では浮いてしまう。化粧直しもしていない。
(……じゃなくて!)
そもそも、朋也と食事をしようだなんて考えもしなかったのに。
「まあ野暮なことはなしで。腹が減ってるんだ、とりあえず食おう。まずは俺のお勧めを適当にみつくろってもいいかな」
美空が根負けすると、朋也はお酒と料理を勝手知ったる様子で注文していく。常連なのかもしれない。
朋也の機嫌は、美空がこれまで見たなかでいちばんよさそうに見えた。
朋也は飲まなかったが、美空は一杯だけ日本酒をいただいた。
すっきりとしているのにまろやかな味わいが口に広がると、美味しい食事のおかげもあって肩の力が抜けていく。
先付の柿と胡桃の白和え、椀ものは蕪と海老の菊花仕立て、お造りに松茸と野菜の天ぷら。
さらに近江牛のサーロインステーキが続くころには、感嘆のため息とともに漏れる感想も、ただただ「美味しい」ばかりになっていた。



