大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 あのとき。
 いくら社の人間としての対応を考えたからにしろ、学生に運行支援の仕事をこき下ろされたままだったら、美空は今ごろ後悔していたに違いなかった。
 言い返さなければ、肯定とおなじ。だからこそ美空は同僚のためにも、あの場で毅然として否定するべきだった。
 それができなかったのは、美空自身に引け目があるからだ。目指したものになったと胸を張ることができない、という。
 胸の奥に封じていたその引け目を意識させられるようになったのは、ほかならぬ朋也のせいだが。

(あのひとのせいで弱腰になったんだから、お礼を言うのは変……? しかもあんな発言までして学生をやりこめるなんて、いくらなんでもやり過ぎよ)

 しかし逆に考えれば、朋也は美空自身への揶揄にも代わりに言い返してくれたとも受け取れる。
『先約』などというでまかせがすらすらと出るあたり、信用ならないとはいえ。

(複雑だけど……でも嬉しかったのも、たしかだから)

 悩んだ美空だったが、まもなく降車駅に着くという車内アナウンスに意を決し、メッセージの返信を送る。

【職場見学の際は、助けてくださりありがとうございました】
【千歳空港の朝日も、綺麗でした】

 送ったあとで、美空は素っ気ない文面に顔をしかめた。
 助けられておいてメッセージだけですませるのは、恩知らずだろうか。

【直接お礼を言いたいのですが、ご都合はいかがですか?】

 迷ってからつけ加えたメッセージに対して、返事がきたのは驚くほど早かった。