大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 翌日の昼下がり。美空は電車に揺られながら、担当するアジア路線の各地域の天気予報をスマホのアプリで確認した。
 今日は夜勤だ。
 各地とも天気は良好のようで、ほっとする。本格的に冬が始まるのはまだ先。
 美空は頭の中で、今日の便のフライトプランを自分なりに立ててみる。昨日から大きな変更はせずにすみそうだった。

「……しまった」

 アプリを閉じただけのつもりが、写真フォルダをタップしてしまったらしい。
 ファイルの七割は空の写真だ。
 展望デッキからの眺めが多いが、飛行機を写したものはない。ちなみにホーム画面には、美空が運航支援者として勤務した初日の空を設定している。
 夕方から夜にかけてのものばかりなのは、シフトのせいである。夜勤明けは寄り道する元気もなく自宅に直行する。
 見るともなしに写真を眺めた美空は、最後の写真に顔をしかめた。
 メッセージアプリに届いた、特別な場所から見た千歳空港の空。
 美空はその写真を、無意識にスマホへダウンロードしていたのだった。

(今さら、どう返信しろって言うの。あのひとを思い浮かべるだけで、心が乱されるのに)

 メッセージのほうは、今も既読無視のままだ。
 朋也と関わりたくなくて突き放す一方で、彼から送られた画像をわざわざスマホに保存しているという矛盾。
 その理由を、美空は自分でもうまく説明できなかった。
 説明できないからこそ、ますます自分の心を持て余してしまう。いつもの自分でいられなくなる。

(でも、この前助けてもらったのは事実で……)

 朋也が、美空たちの仕事への敬意を口にしてくれたことを思い出す。多少、学生向けに誇張はあったかもしれないが、あの発言に嘘は感じられなかった。