大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 美空が引き受けた一週間後、学生らが六十名ほどやってきた。
 皆、ゲスト用のネームカードを首から下げており、そのほとんどが男子学生だ。事前の情報によれば操縦学科および整備学科所属だという。
 学生らは三班に分かれ、そのひとつを美空が請け負った。
 社外に見せても問題ない程度にオペセンを見学させた後、別室で彼らに業務内容の紹介を行う。
 すると、見学の学生では珍しい、シルバーのメッシュを入れた髪色の学生が挙手をした。

「――ディスパッチャーの仕事って、パイロットやCAに接する機会もないし空港にも行かずにただモニター見てるだけですよね。なにが面白いんですか?」
「それは――」

 本社勤務のディスパッチャーは全国の便を管理していても、パイロットとの直接の接点は少ない。地方空港の場合はディスパッチャーが機長と直接話をすることもあるが、羽田の場合はそれもほぼない。
 美空はこの仕事のやりがいを説明するが、直接機体に触れる仕事ではないからか学生たちにはいまいち伝わらなかったようだ。質問をした学生も鼻白んだ風だった。

(そうだよね、なんといってもパイロットや整備士を目指す学生たちだし)

 気を取り直し、羽田空港に場所を移す。出発から到着までの流れの基本を説明しつつ、空港内オフィスを案内した。
 彼らのイメージそのままの「航空業界」の人間らが行き来する姿を実際に目にすれば、彼らのテンションも変わったのが肌で感じ取れる。
 ここが最前線の現場なのだから、彼らの目が生き生きと輝くのも当然だろう。

「ブリーフィング中の社員もいるので、静かに見てくださいね」

 ブリーフィングルーム内のカウンターは六割ほどが埋まっていた。そのそれぞれでは、機長と副操縦士がパソコンの画面を覗きながら打ち合わせを行っている。
 いずれも真剣な表情だ。
 美空たちは邪魔にならないようブリーフィングの光景を見学し、学生を連れて廊下に出る。そのときだった。

「――やっぱ断然、パイロットだよな。事務なんか飛行機が飛ばなきゃ、なんもできねーんだろ。パイロットのおかげで、給料をもらえてるだけじゃん。お姉さんもつまんねえ事務なんかやってねーで、せめてCAにでもなればよかったのに」