大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

「まだ話は終わっていないと思うな。木崎さんの好きな景色も聞けていないし、せっかくだから飯でもどう?」
「いいえ、わたしのほうはこれ以上お話しすることもありません。お疲れ様です」
「なんでそんなに頑ななの?」
「そちらこそ、女性が誰でも誘いに乗ると思っておられるのでしたら認識をあらためたほうがよいのではないでしょうか。そうでなくても、あなたならひと声かけるだけで喜ぶ女性は多いはずです。そちらに歩み寄る努力でもしてください」

 われながらとんだ当てつけだ。でも、なぜ朋也に対して頑なになるのか――ほんとうの理由を言えるわけがない。
 胸がズキズキと痛む。
 これ以上話せば、とんでもない暴言を吐きそうだった。

「木崎さんに嫌われているみたいだね、俺」
「理解してくださって助かります」
「俺は、木崎さんのことをもっと知りたいんだけど」
「っ!?」
「メッセージの返信、待ってるから。お礼の件もね」

 さらりとつけ加えて先に帰った朋也の背中を、美空は憤慨もあらわににらみつける。
 もう届かないと知りつつ、言わずにはいられなかった。

「どちらもしませんから!」


 
 航空専門学校の学生がエアプラス社本社と羽田空港の見学に来るから、案内役をしてほしい。
 美空が広報の人間から白羽の矢を立てられたのは、朋也と話した翌日だった。
 なぜ自分がと美空はふしぎだったが、なんのことはない。相手は父が教鞭を取る学校の生徒だった。わざわざ関西から来るという。
 聞けば美空に案内役をさせるよう、父が裏で広報にかけ合っていたらしい。
 入社四年目、ほどほどに経験があり、ほどほどに学生たちとも年齢が近いという理由も後押ししたようだ。