大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 美空はびくっとしたが、朋也は美空の横を通り抜けフェンスに手をついた。

「俺は、夜だな」

 朋也がつぶやいて、フェンスの向こうを見やる。
 ただフェンスに手をついただけなのに、背が高いためか立ち姿が様になる。
 その場を辞すタイミングを逃してしまい、美空はしかたなく耳を傾けた。

「すべての機体が無事に帰ってきて、駐機スポットに並ぶと、鳥が羽を休めているように見える。お前たち、今日もよく頑張ったなって声をかけたくなる」
「……あなたが飛ばしているのに?」
「まあ、そうなんだけど。でもときどき思う。俺はただこいつらと一体になっているだけで、実際はこいつらの意のままに操縦桿を握っているだけなんじゃないかって。……ふしぎだよな、相手は無機物なのに」

 美空には理解しがたい感覚だったが、朋也はまさにパイロットになるために生まれてきた人間なのだと思わせられる。
 訓練生の身でありながらハリケーンの接近にも動じず、機体を無事に着陸させた――という朋也の逸話が頭によみがえった。

「だから、どんなときでも冷静なんですね」
「別に、冷静じゃないよ」
「でも優秀だと聞きましたよ。今だって、わたしがなにを言っても聞く耳を持たないじゃないですか」
「それは冷静というよりむしろ、図太いと言われているように聞こえるんだけど。合ってる?」

 朋也が口元に手を当ててくつくつと笑う。
 このひとも笑うのか、と思ったことは口にしなかった。

「正しい認識をしてらっしゃると思います」
「木崎さんって、俺にも容赦ないね。朝焼けの写真も気に入らなかったようだし」

 美空は顔を伏せた。
 機体のエンジン音が、耳に迫る。

「……そんなんじゃありません」
「じゃあ、なに?」
「……帰ります」

 美空は口元を引きしめて踵を返したが、朋也もついてきた。