百八十センチを超えているはずの朋也は、すらりとした足をさばく姿さえも様になる。それにあの彫刻めいた完璧な顔立ち。
見るなというほうが無理だろう。
(騙されちゃダメ、あの顔の裏には陰険で傲慢な性格が隠されているんだから)
うかつにも見入っていた美空は、朋也が美空に気づいた様子を見せたとたんハッとした。よからぬ誤解――たとえば、美空がホイホイと喜んで会いにきたとか――を抱かれては困る。
美空は業務用の笑顔を作ると、機長と朋也の前に進み出た。
「お疲れさまです。オペレーションコントロール部の木崎です。沖形さん、乗務前に恐れ入ります」
「なに? この前の話の続きなら、フライト後に聞くよ」
「いえ、あの話に続きはありません。それより、これを。……お忘れになったでしょう」
美空は手にしていたものを、朋也に差し出した。
「航空安全守護」という文字と飛行機の機体が描かれた、青色のお守りだ。航空業界の関係者には有名な、空港内の神社のものである。
だが何年も……下手をすると十年は持ち歩いているのだろう、元は鮮やかだったはずの青色はくすみ、角の部分は擦り切れている。お世辞にも状態がよいとは言えなかった。
お見合いの日、ホテルから移動したときに朋也が落としたのを拾ったまま、渡しそびれていたのだ。
「わざわざ、フライト前に?」
お守りを取りあげた朋也が、いぶかしげにお守りと美空を見比べる。
美空は別に悪いことをしたわけでもないのに、言い訳がましく返した。
「だって、験を担いでるかもしれないでしょう? わたしの父がそうでしたから、念のため」
高いメンタルコントロールが求められるため、験を担ぐパイロットは多いと父は事あるごとに言っていた。
安全運航のため、無事に家族の元に戻るため。父の験担ぎは、フライトの前に必ず母と美空が写った写真を撫でることだった。
見るなというほうが無理だろう。
(騙されちゃダメ、あの顔の裏には陰険で傲慢な性格が隠されているんだから)
うかつにも見入っていた美空は、朋也が美空に気づいた様子を見せたとたんハッとした。よからぬ誤解――たとえば、美空がホイホイと喜んで会いにきたとか――を抱かれては困る。
美空は業務用の笑顔を作ると、機長と朋也の前に進み出た。
「お疲れさまです。オペレーションコントロール部の木崎です。沖形さん、乗務前に恐れ入ります」
「なに? この前の話の続きなら、フライト後に聞くよ」
「いえ、あの話に続きはありません。それより、これを。……お忘れになったでしょう」
美空は手にしていたものを、朋也に差し出した。
「航空安全守護」という文字と飛行機の機体が描かれた、青色のお守りだ。航空業界の関係者には有名な、空港内の神社のものである。
だが何年も……下手をすると十年は持ち歩いているのだろう、元は鮮やかだったはずの青色はくすみ、角の部分は擦り切れている。お世辞にも状態がよいとは言えなかった。
お見合いの日、ホテルから移動したときに朋也が落としたのを拾ったまま、渡しそびれていたのだ。
「わざわざ、フライト前に?」
お守りを取りあげた朋也が、いぶかしげにお守りと美空を見比べる。
美空は別に悪いことをしたわけでもないのに、言い訳がましく返した。
「だって、験を担いでるかもしれないでしょう? わたしの父がそうでしたから、念のため」
高いメンタルコントロールが求められるため、験を担ぐパイロットは多いと父は事あるごとに言っていた。
安全運航のため、無事に家族の元に戻るため。父の験担ぎは、フライトの前に必ず母と美空が写った写真を撫でることだった。



