大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 だが、こればかりは譲れない。最初から会うだけだと言っていたのだ、じゅうぶんに父の顔を立てたはずだと思う。
 深いため息が漏れるのをシャワーの栓を閉めると同時に止め、美空は浴室を出た。
 エアプラス社に入社する直前、羽田へのアクセスを考えて決めた部屋は、今ではほとんど寝に帰るだけの場所だ。
 初めてのひとり暮らしだったから、当初は家具や小物にも凝ったものだったが、それも社会人二年目には頓着しなくなった。育てていた観葉植物が枯れてからは、植物を育てることも諦めた。
 髪を乾かしてリビングダイニングに戻ると、ソファに放りっぱなしだったバッグから小物がはみ出ているのが目に入る。
 そのひとつが目に入ったとたん、美空は顔をしかめた。
 もう二度とプライベートでは連絡するつもりもない相手だったのに、もう一度会わなければならない。
 それも不本意ながら――早急に。
 


 さいわいと言っていいのかわからないが、見合いの日を決める際に朋也のスケジュールは聞いている。
 今日は夜勤なのでいつもならまだ自宅にいる時間だが、美空は昼過ぎには羽田空港の搭乗ゲートに足を運んでいた。本来なら、搭乗客以外が搭乗ゲート内に入ることはできない。だが美空は職員証を提示して事情を話し、許可を得ていた。
 朋也が乗務する便は把握している。
 彼自身も、もうまもなく姿を現すはずだ。
 機長らクルーのブリーフィングルームがある空港内オフィスへ行くのが妥当ではあったが、そちらに近づく気にはなれなかった。できれば朋也がCAを手ひどく扱う光景も見たくない。
 視線をめぐらせると、搭乗口にやってくる朋也の姿を見つけた。
 機長とふたりのようで、美空は胸を撫でおろす。

(にしても、目立つひとよね)

 彼らは搭乗客の注目を集めていた。話しかける客こそいないが、皆の視線が吸い寄せられているのがわかる。