「え、と。どういうふうに……?」
「木崎さんが言ったのに、忘れた? 『好きだとか付き合いたいと思う理由に、正解も不正解もない――』」
「あああっ」
自分の発言を思い出すなり羞恥がどっと湧き、美空は手のひらを突き出して朋也の言葉を遮った。
「蒸し返さないでください。あれは」
「あれは?」
美空は言葉に詰まったまま、朋也がエレベーターに乗りこむのに続く。彼は屋上階のボタンを押した。
『見た目や肩書きだけで好きだとか付き合ってとか言う女の気がしれないね』
あのとき、美空はまるで自分を否定されたように感じたのだった。
美空もまた、見た目やイメージで好きになったものがあったからだ。その好きなものに、手ひどい挫折を味わされたから。
だからカッとして言い返してしまったのだと、今ならわかる。
それにしてもあれは自分でも大人げなかったと思う。
「いえ、なんでもないです。忘れてください」
「大事なことなのに。それともあの発言、取り消す?」
「取り消しません。でもあれは言い過ぎでした、反省してます」
「反省しなくていいよ。言ったよね、気が変わったって」
エレベーターが屋上につき、美空は背中に手を添えられた。ドキッとしたのを気取られないようにエレベーターを降りる。
一歩、外に出ればそこは美空もよく知る場所だった。
落ちこんでも、嬉しくてもつい足が向く場所。
視界が開ける。長い髪が初秋の清々しい風になびく。
耳慣れたエンジン音に、隣の朋也を一瞬忘れるほど胸が高鳴った。晴れ渡った空の下に、白い機体が躍る。
展望デッキだった。
美空はつい、いつものようにフェンス近くまで足を進める。顔にかかった髪を耳にかけていると「木崎さん」と呼びかけられた。
ふり返る。
「自分でも理解しがたいことではある。けど……なぜか、木崎さんとはこれで終わりたくないと思ったんだよね」
平然と――いや、違う。口調こそ淡々としていたし、表情もほとんど動いていない。だが、ほんのわずか苦虫を噛み潰したような顔。
美空の頭はフリーズした。
「木崎さんが言ったのに、忘れた? 『好きだとか付き合いたいと思う理由に、正解も不正解もない――』」
「あああっ」
自分の発言を思い出すなり羞恥がどっと湧き、美空は手のひらを突き出して朋也の言葉を遮った。
「蒸し返さないでください。あれは」
「あれは?」
美空は言葉に詰まったまま、朋也がエレベーターに乗りこむのに続く。彼は屋上階のボタンを押した。
『見た目や肩書きだけで好きだとか付き合ってとか言う女の気がしれないね』
あのとき、美空はまるで自分を否定されたように感じたのだった。
美空もまた、見た目やイメージで好きになったものがあったからだ。その好きなものに、手ひどい挫折を味わされたから。
だからカッとして言い返してしまったのだと、今ならわかる。
それにしてもあれは自分でも大人げなかったと思う。
「いえ、なんでもないです。忘れてください」
「大事なことなのに。それともあの発言、取り消す?」
「取り消しません。でもあれは言い過ぎでした、反省してます」
「反省しなくていいよ。言ったよね、気が変わったって」
エレベーターが屋上につき、美空は背中に手を添えられた。ドキッとしたのを気取られないようにエレベーターを降りる。
一歩、外に出ればそこは美空もよく知る場所だった。
落ちこんでも、嬉しくてもつい足が向く場所。
視界が開ける。長い髪が初秋の清々しい風になびく。
耳慣れたエンジン音に、隣の朋也を一瞬忘れるほど胸が高鳴った。晴れ渡った空の下に、白い機体が躍る。
展望デッキだった。
美空はつい、いつものようにフェンス近くまで足を進める。顔にかかった髪を耳にかけていると「木崎さん」と呼びかけられた。
ふり返る。
「自分でも理解しがたいことではある。けど……なぜか、木崎さんとはこれで終わりたくないと思ったんだよね」
平然と――いや、違う。口調こそ淡々としていたし、表情もほとんど動いていない。だが、ほんのわずか苦虫を噛み潰したような顔。
美空の頭はフリーズした。



