ともすれば視線が下がりがちになり、美空は何度も踏みとどまる。
父には何度も着物を勧められたが、ワンピースにして正解だった。先日の朋也の発言を思い出すに、着物なんか着て張り切っていると思われるのは癪だ。
ふたりが初対面ではなかったと知り、隣の席の父が相好を崩した。そうでなくても、父は朝からそわそわしていた。
これほど心を弾ませる父を見るのは、母が亡くなってからは初めてだと思う。
専門学校で何人も生徒を飛行機に乗せているだろうに、やはり現役パイロットへの思い入れは別らしい。
そして、朋也は美空が拍子抜けするほど紳士的だった。
大いに私情のまじった父の質問にも嫌な顔ひとつ見せずにこやかに答え、彼の両親の話をユーモアも織り交ぜて補足し、場を盛りあげる。
(というか、女性に関心がなさそうだったのにお見合いはするんだ)
おおかた、朋也も親に言われてしかたなく来たというところか。それにしては意外だった。
先日の態度から考えるに、さっさと帰るくらいのことはしてもおかしくない。しかし目の前の朋也からは、女性をすげなく振る冷淡さも、傲慢さもうかがえなかった。
親同士が知り合いということもあり、ひとり呆然とする美空をよそに会話は弾んでいく。
(沖形さんは、わたしが見合い相手だと知ってたんだ)
ネームカードを見てピンときたのだろう。
だから迷うことなく美空を「みく」と呼んだ。たいていのひとが、初見ではまず「みそら」と読むのに、だ。
だったらその場で言ってくれればと思うが、気づきもしなかった自分のほうが失礼かと思い直す。
(それなら、最後のあの『覚えておいて』は……)
覚えておけよ、次に会ったときに自分への発言を後悔させてやる――。
父には何度も着物を勧められたが、ワンピースにして正解だった。先日の朋也の発言を思い出すに、着物なんか着て張り切っていると思われるのは癪だ。
ふたりが初対面ではなかったと知り、隣の席の父が相好を崩した。そうでなくても、父は朝からそわそわしていた。
これほど心を弾ませる父を見るのは、母が亡くなってからは初めてだと思う。
専門学校で何人も生徒を飛行機に乗せているだろうに、やはり現役パイロットへの思い入れは別らしい。
そして、朋也は美空が拍子抜けするほど紳士的だった。
大いに私情のまじった父の質問にも嫌な顔ひとつ見せずにこやかに答え、彼の両親の話をユーモアも織り交ぜて補足し、場を盛りあげる。
(というか、女性に関心がなさそうだったのにお見合いはするんだ)
おおかた、朋也も親に言われてしかたなく来たというところか。それにしては意外だった。
先日の態度から考えるに、さっさと帰るくらいのことはしてもおかしくない。しかし目の前の朋也からは、女性をすげなく振る冷淡さも、傲慢さもうかがえなかった。
親同士が知り合いということもあり、ひとり呆然とする美空をよそに会話は弾んでいく。
(沖形さんは、わたしが見合い相手だと知ってたんだ)
ネームカードを見てピンときたのだろう。
だから迷うことなく美空を「みく」と呼んだ。たいていのひとが、初見ではまず「みそら」と読むのに、だ。
だったらその場で言ってくれればと思うが、気づきもしなかった自分のほうが失礼かと思い直す。
(それなら、最後のあの『覚えておいて』は……)
覚えておけよ、次に会ったときに自分への発言を後悔させてやる――。



