大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

「皆様、沖形、木崎便はまもなく幸せとともに離陸いたします。天候は快晴。到着予定時刻は、一生をかけたのちでございます――」

 美空はこの日のために作成したふたりの結婚生活のフライトプランを、ゲストの前に掲げる。
 笑っても、泣いても。怒っても、喧嘩しても。どんな日もふたりでいようというプランだ。
 ディスパッチャーと機長になぞらえ、美空の署名入りのそれを皆の前で朋也に渡す。ゲストも大半が航空業界の人間なので、この演出にはあちこちで歓声が上がった。
 朋也が神妙な顔で署名をすると、わっと拍手に包まれる。
 一般の客からも拍手が湧く中、美空はそっと朋也に耳打ちした。

「いつか、本物でこれができるように。わたし、頑張るよ」
「俺も。美空のフライトプランで飛ぶために、機長になるから」

 結婚の誓いとは別の、ふたりだけの約束。
 心の芯に火を灯すように明るく、とびきり甘い。
 約束の証は、誓いには少々長すぎるキス。
 ふたたび湧いた拍手に、徐々に呆れ笑いがまじる。それでも朋也はおかまいなしだ。
 だが、美空も今日ばかりは朋也を責める気にはならない。美空も浮かれているのだから。

(これからも、朋也と)

 おなじ空を見て、おなじ想いで飛び続ける。公私共に、たしかなパートナーとして。
 美空が署名したフライトプランに、朋也の名前が添えられる――。
 そんな幸せな未来が、このとき美空の脳裏に、鮮やかに広がっていった。


<了>