「えっ、あ……見てたわけじゃ」
尖った声をぶつけられ、美空ははっとした。
いつのまにか美空まで立ち止まってしまっていた。気まずさと羞恥で顔を赤らめる。
「木崎さんも、さっきの彼女とおなじ目的? だったら悪いけど時間の無駄なので帰ってくれる? お疲れ様」
「違っ、誰がそんなこと……ってその前にどうしてわたしの名前」
「それ」
と、そっけなく指を差されたのは、首から下げたままのネームカードだった。
退勤のときに外すのを忘れていたらしい。
美空は慌てて首から外した。社内の人間だとわかっていたから、最初から言葉使いに容赦がなかったのか。
遅ればせながら納得した美空の横を、パイロットがさっさとすり抜ける。
胸につけた名札には沖形と書かれていた。
どこかでその名前を見聞きしたことがある気がしたが、どこでだったか思い出せない。気のせいかと、美空は頭から振り払った。
「待ってください」
「なに? まだ打ち合わせが残ってるんだよね」
沖形が足を止めないので、美空も追いかけて横に並んだ。足の長い沖形とは、一歩の幅がまったく違う。
美空は自然、早足になった。
「これだけ言わせてください。なにか誤解なさったようですが、わたしはあなたへの興味なんてありません」
「あ、そう? それなら俺としてもほっとしたよ。この制服を着ているだけで女が寄ってくるから、うんざりしていた」
「それって、さっきの女性のことを指してらっしゃいます?」
「やっぱり見てたんだ。ああいう類いは『パイロットの恋人』というアクセサリーがほしいだけでね。あいにく俺は女のアクセサリーになる気はないし、ガキのころならまだしも、見た目や肩書きだけで好きだとか付き合ってとか言う女の気が理解できないんだよね」
あくまでもさらりとした声音には、無愛想だけではない冷たさを感じる。好きの反対は嫌いではなく無関心だ、と耳にしたことがあるが、沖形の口調はまさにそれだった。
嫌悪という感情すらなく、無関心。
尖った声をぶつけられ、美空ははっとした。
いつのまにか美空まで立ち止まってしまっていた。気まずさと羞恥で顔を赤らめる。
「木崎さんも、さっきの彼女とおなじ目的? だったら悪いけど時間の無駄なので帰ってくれる? お疲れ様」
「違っ、誰がそんなこと……ってその前にどうしてわたしの名前」
「それ」
と、そっけなく指を差されたのは、首から下げたままのネームカードだった。
退勤のときに外すのを忘れていたらしい。
美空は慌てて首から外した。社内の人間だとわかっていたから、最初から言葉使いに容赦がなかったのか。
遅ればせながら納得した美空の横を、パイロットがさっさとすり抜ける。
胸につけた名札には沖形と書かれていた。
どこかでその名前を見聞きしたことがある気がしたが、どこでだったか思い出せない。気のせいかと、美空は頭から振り払った。
「待ってください」
「なに? まだ打ち合わせが残ってるんだよね」
沖形が足を止めないので、美空も追いかけて横に並んだ。足の長い沖形とは、一歩の幅がまったく違う。
美空は自然、早足になった。
「これだけ言わせてください。なにか誤解なさったようですが、わたしはあなたへの興味なんてありません」
「あ、そう? それなら俺としてもほっとしたよ。この制服を着ているだけで女が寄ってくるから、うんざりしていた」
「それって、さっきの女性のことを指してらっしゃいます?」
「やっぱり見てたんだ。ああいう類いは『パイロットの恋人』というアクセサリーがほしいだけでね。あいにく俺は女のアクセサリーになる気はないし、ガキのころならまだしも、見た目や肩書きだけで好きだとか付き合ってとか言う女の気が理解できないんだよね」
あくまでもさらりとした声音には、無愛想だけではない冷たさを感じる。好きの反対は嫌いではなく無関心だ、と耳にしたことがあるが、沖形の口調はまさにそれだった。
嫌悪という感情すらなく、無関心。



