大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 しかも奥のテーブル席に通されれば、父が座っているではないか。

「パパ……? えっ、連絡もなかったのに。なにかあったの?」
「俺は席を外すから、お父さんとゆっくり話してみて」

 朋也はそう言うと、今来たばかりのラウンジを出ていってしまう。あとに残された美空はわけがわからずに立ち尽くした。苦笑いした父に言われて、初めてソファに腰を下ろす。
 なぜだろうか。父の様子がいつもと違う。心なしか緊張しているようだ。
 そう気づくと美空まで緊張してしまい、ミルクティー色の膝丈スカートの上で両手を握り合わせた。

「朋也くんは、いよいよ機長訓練が始まったそうだね。さすが、エアプラス社期待の星だ」

 父の口から出たのは、相変わらずパイロットの賞賛だった。予想はしていたが、またかと苦笑してしまう。
 それでも、前回父と話したときほどには心を痛めずに同意できた。

「訓練に試験勉強に……パイロットの努力には頭が下がるよ。わたしたちはそのおかげで、空の旅を楽しめるんだもの」
「そうだろうそうだろう! ……いや、違うんだ。今日はそういうことを言いにきたのではなくて……だな」
「どうしたの? 仕事のこと? それともママの十三回忌……はまだ先だっけ」

 煮え切らない様子の父をふしぎに思いながら、美空はレモネードを口にする。思ったよりは酸味が少なくて、まろやかな味がした。

「実は昨日の朝、朋也くんから電話をもらってね。美空のことを話してたんだ。聞いたよ、深夜のダイバートの件。それで……パイロットがパイロットであるために、陰で支えている美空はすごいだろうと、朋也くんに自慢したらだな。その……それはぜひ美空に直接伝えてくれと言われたんだ」

 美空は目をみはった。
 聞き違いでなければ、父が美空のことを認めてくれている……ということだろうか。父にはパイロットがすべてのはずではなかったか。