少年は、大事なひとからそう教わったのだという。彼は、そのひとを見送るために空港に来ていた。
少年とはそれきりだったが、そのひと言は妙に美空の胸に残った。それがきっかけで運航管理という仕事を知り、慌てて選考にエントリーした。
「そのひと言がなかったら、わたしは航空業界から逃げてたと思う。今のわたしがいるのは……その子のおかげ」
「じゃあ、俺にとっても恩人だ」
うしろから抱きすくめられる。美空はそのぬくもりを存分に味わってから、つま先立つ。伸びあがってキスすると、朋也が虚を突かれた顔をした。
今になって羞恥が湧き、美空は朋也から離れた。考えてみれば、ここはオープンな場所である。真冬だから数は少ないが、飛行機ファンの姿がないわけではない。
それでも、なんとなく離れがたくて朋也に手を伸ばす。気づいた朋也が手を握ってくれた。
(いつのまにか、この手に安心をもらってる)
だが、またすぐお預けだ。美空は遅番なのでそろそろ本社ビルに移動しなければいけない。
展望デッキをあとにして歩き出した朋也が、思い出したように足を止めた。
「そうだ。一日遅れだけど、美空にバレンタインデーのプレゼントを用意できると思う。明日を楽しみにしてて」
そして翌日。
暦の上では立春を超えてからも真冬の寒さが続いていたが、今日は急に七度も気温が上がったので、美空はつい先ほどマフラーを外したところだ。心なしか、頬を撫でる風にさえ春めいた香りがするように思えて気分がいい。
それにしても朋也はどこへ連れていこうというのだろう。
「はい、今日はここ。近場だけど」
「え……あれ、ホテル? どうして」
驚いて目を泳がせるあいだにも、朋也は美空をラウンジに連れていく。美空が朋也と見合いをした場所だった。
少年とはそれきりだったが、そのひと言は妙に美空の胸に残った。それがきっかけで運航管理という仕事を知り、慌てて選考にエントリーした。
「そのひと言がなかったら、わたしは航空業界から逃げてたと思う。今のわたしがいるのは……その子のおかげ」
「じゃあ、俺にとっても恩人だ」
うしろから抱きすくめられる。美空はそのぬくもりを存分に味わってから、つま先立つ。伸びあがってキスすると、朋也が虚を突かれた顔をした。
今になって羞恥が湧き、美空は朋也から離れた。考えてみれば、ここはオープンな場所である。真冬だから数は少ないが、飛行機ファンの姿がないわけではない。
それでも、なんとなく離れがたくて朋也に手を伸ばす。気づいた朋也が手を握ってくれた。
(いつのまにか、この手に安心をもらってる)
だが、またすぐお預けだ。美空は遅番なのでそろそろ本社ビルに移動しなければいけない。
展望デッキをあとにして歩き出した朋也が、思い出したように足を止めた。
「そうだ。一日遅れだけど、美空にバレンタインデーのプレゼントを用意できると思う。明日を楽しみにしてて」
そして翌日。
暦の上では立春を超えてからも真冬の寒さが続いていたが、今日は急に七度も気温が上がったので、美空はつい先ほどマフラーを外したところだ。心なしか、頬を撫でる風にさえ春めいた香りがするように思えて気分がいい。
それにしても朋也はどこへ連れていこうというのだろう。
「はい、今日はここ。近場だけど」
「え……あれ、ホテル? どうして」
驚いて目を泳がせるあいだにも、朋也は美空をラウンジに連れていく。美空が朋也と見合いをした場所だった。



