きっと、今日がバレンタインデーだから……という理由もあったのではないか。
まだ春の気配は遠く、展望デッキは特に冷える。だが、この冷たい空気特有の匂いは嫌いじゃない。朋也がそばにいるからそう思えるのかもしれなかったが。
朋也は、ダイバートした中部国際空港から陸路で羽田に戻ってきた。
朝いちばんの羽田便は満席だったのだ。昨日のダイバートで予期せぬ宿泊を強いられた乗客が、羽田に戻ろうとしたからである。
乗客に迷惑をかけたのは申し訳なかったが、それでもあのとき羽田への着陸を無理強いしなくてよかったという思いは変わらない。
乗客乗員の安全を守るために、やれることをやったという自負があった。
「昨日はお疲れさまでした。やっぱりパイロットはすごいと思ったよ」
出発直後のエアターンバック、そして大幅な遅延からのやり直しは、場数を踏んだパイロットでも消耗したに違いない。
燃料が補給されたなかったことも、不安材料だったはずだ。そんな中、ようやく日本に戻ったと思ったら、今度はダイバート。
よほどの集中力がないと、二十四時を過ぎての中部国際空港でのランディングまでこなせなかったと思う。
「通信のときも、いっさい渋らずに意見を聞いてくれたよね。機長と朋也の判断力にも感心させられちゃった。それに……」
「それに?」
と、美空は背後から包みこむように抱きしめられた。風が止む。
「……あのとき、朋也との通信でやっとわかったの」
パイロットだけが正解じゃないという言葉を、美空はあのとき初めてほんとうの意味で理解したのだった。
まだ春の気配は遠く、展望デッキは特に冷える。だが、この冷たい空気特有の匂いは嫌いじゃない。朋也がそばにいるからそう思えるのかもしれなかったが。
朋也は、ダイバートした中部国際空港から陸路で羽田に戻ってきた。
朝いちばんの羽田便は満席だったのだ。昨日のダイバートで予期せぬ宿泊を強いられた乗客が、羽田に戻ろうとしたからである。
乗客に迷惑をかけたのは申し訳なかったが、それでもあのとき羽田への着陸を無理強いしなくてよかったという思いは変わらない。
乗客乗員の安全を守るために、やれることをやったという自負があった。
「昨日はお疲れさまでした。やっぱりパイロットはすごいと思ったよ」
出発直後のエアターンバック、そして大幅な遅延からのやり直しは、場数を踏んだパイロットでも消耗したに違いない。
燃料が補給されたなかったことも、不安材料だったはずだ。そんな中、ようやく日本に戻ったと思ったら、今度はダイバート。
よほどの集中力がないと、二十四時を過ぎての中部国際空港でのランディングまでこなせなかったと思う。
「通信のときも、いっさい渋らずに意見を聞いてくれたよね。機長と朋也の判断力にも感心させられちゃった。それに……」
「それに?」
と、美空は背後から包みこむように抱きしめられた。風が止む。
「……あのとき、朋也との通信でやっとわかったの」
パイロットだけが正解じゃないという言葉を、美空はあのとき初めてほんとうの意味で理解したのだった。



