大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 知らず目元がほんのり赤く染まる。その様子を瀧上が複雑な顔で見ていたことには、気づかなかった。

「……よかったな」
「ありがとうございます。って無駄話でしたね。失礼しました」

 朋也は今日もフライトだ。羽田到着便の最後の便、香港からのフライトは出発空港での遅延が影響して二十三時半に着陸する予定だった。
 その直前も、那覇便に乗務したばかりだ。そろそろ疲れが溜まっているのではないだろうか。
 羽田に戻れば二日ほどオフが続く予定なので、早くゆっくり休ませてあげたい。
 フライトレーダー上では、すでに日本上空に朋也が乗務している便の機影を捕らえている。

 刻一刻と羽田に近づく、飛行機のアイコンを祈るような気持ちで眺めていた美空は、瀧上の元に入った通信に肩を強張らせた。

「――わかりました。すぐ各便に連絡します」

 通信は東京タワーと呼ばれる、空港で離発着をコントロールする管制からのものだった。羽田空港付近で積乱雲が発生しているという。
 積乱雲の中は気流が乱れるため、うかつに当たれば機体もただではすまない。その上、厄介なことにレーダーに映るものもあれば肉眼でしかとらえられないものもある。急激に発達するので予測するのも難しい。
 まして、今は夜間。
 混雑する時間帯でないことだけが唯一の安心材料だが、これから羽田に到着する便は積乱雲の隙間を縫って着陸するか、あるいはダイバートが必要になる。
 AP476、朋也が乗務する香港便も当然ながらその中に入る。瀧上はすぐさまAP476便に連絡を取り、積乱雲の発生を伝えた。
 通信相手の声は朋也のものではなかったということは、彼が操縦桿を握っているようだ。

「――まずいな」

 通信を終えた瀧上が、あまり見せない渋面でつぶやく。美空も自席のモニターをチェックして、すぐにその理由に気づいた。