大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 CAが飲み物を提供する声が近づく。おなじエアプラス社のクルーだと思うと、とっさに笑顔を作ることができなかった。美空はうつむく。
 朋也が代わりに返事をするのをどこか遠いもののように聞きながら、美空は朋也こそ、クルーに自分とふたりでいるところを見られて気まずくないかと気になった。
 目の前にあたたかい飲み物のカップが差し出され、美空は顔を上げる。朋也が美空の分をもらってくれたらしい。
 口をつけると、お茶ではなくコンソメスープだった。ほっとする味に、ささくれ立っていた心が凪いでいく。

「美空はお父さん子というか、お父さんしかいなかったものな。お父さんの……パイロットの姿が焼きついて離れないのも無理はないと思う。だから、そこから離れられない自分を否定しなくていいんじゃないかな」

 そっと髪を撫でられる。その手が優しい。

「けど、お父さんの姿だけが正解じゃない。パイロットだけが、唯一の正解じゃないから。それとも美空が俺を好きになったのは、俺に『正解』を求めたからだった? ああ、もしそうだとしても甘んじて受け入れるよ。好きになる理由に優劣はないって、諭されたからね」

 以前の美空の発言を持ち出して冗談めかされると、つられて笑みが零れた。気持ちがゆるんでいく。

「朋也のことは、そんな風に思ったことない。正解かそうでないかなんて、考えもしなかった」
「うん、知っているよ。ただ美空は、自分に対して『こうあるべき』という正解を求めすぎなきらいがあると思う。だから、お父さんや俺がプレッシャーなんじゃないかな。自分が間違いのように感じるから……と、俺にはそんな風に見える」
「そうなのかな……」
「俺の見立てではね。ただ、美空はひとつ大事なことを忘れているよね」