大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

「話して。自慢話よりいいよ」

 心を軽くしようとしてくれる朋也の気遣いに、ふと視界がにじんだ。慌てて目をまたたいて涙を散らす。

「ん……。昔ね、もう十年くらい昔の、まだ子どものころ……わたしはパイロットになるのが夢だったの」

 家族以外の誰かに話すのは、初めてだった。窮屈そうに投げ出された朋也の長い足とは比べるべくもない、小柄な体が目に入る。
 一瞬、昔の同級生たちのように笑われたらと怖気づいたが、朋也は真剣な顔で耳を傾けていた。そのことにほっとする。

「飛行機を飛ばす父の姿に憧れたの。夢を伝えたら父も喜んで……父みたいになりたくて勉強も頑張った。低学年のうちから英語塾に通ったりね」

 あのころの自分がよみがえる。願えば夢は叶うと無邪気に信じていた。
 どんなにハードルの高い夢でも、努力すれば叶うと疑わなかった。

「だけどこの身長だから、ね。あ、勘違いしないでね。今の仕事に不満はないの。やりがいも感じてる。ただ……父が興味を持つのは昔も今もパイロットだけなんだなって」

 弱く笑うと、膝上に揃えていた手に朋也の手が重なった。あたたかい。

「父のために目指したわけじゃないし、とっくに吹っ切れてる。普段は気にもならない……けど目の当たりにすると、ね。朋也のこともそうだった。パイロットだというだけで、近づくのが苦しかった。朋也はなにも悪くなかったのに」
「ああ、だからか。最初のころ、俺のこと毛嫌いしてたよね」

 責める口調ではないことに救われた思いで、美空はうなずいた。

「ごめんなさい」
「謝ることじゃない」
「ううん、謝ることなの。朋也を好きで、心から尊敬もしてるのに、朋也がパイロットだという事実に勝手に傷ついてる自分が嫌でたまらない。今だって、父の喜びようを見て気が沈む自分が嫌」

 ほんとうに嫌なのは、自分には手の届かなかった夢を手にしている朋也でも、娘をそっちのけで朋也を歓迎する父でもない。
 それらに対して、いまだに引っかかりを感じてくすぶっている自分が嫌なのだ。