「いやあ、パイロットの朋也くんが僕の息子になってくれたら、こんなに嬉しいことはない。今日まで生きてきてほんとうによかったよ」
まだ結婚すると決まったわけじゃない。朋也にプレッシャーをかけないで。
そういった思いが頭をよぎるよりも先に、別の感情が胸を塞いでいく。
紙のカップを持つ手が、かすかに震えた。
気づいた朋也が呼ぶ声が、かろうじて美空を正気に返らせる。
上手く笑って席に戻れたかどうか、自分ではよくわからなかった。
ボタンひとつで採光量を変えられる小さな窓から、ぐんぐんと高度を増す空を眺める。
夕暮れどきの便から見おろす大阪の空は、なぜかもの悲しく見えた。母とよく見た空だ。ぼんやりとしていると、膝を軽く叩かれた。
「ずっと上の空だ」
美空は視線を機内に戻した。
「あ……ごめん。そんなつもりじゃなくて」
「謝る必要はないけど、気にはなる。昼間、お父さんと話してたときから様子がおかしかったよね。お父さんとなにかあった? それとも俺が先走って息子面したのが、気に食わなかった?」
「そんなこと。父に合わせてくれてありがとう」
「じゃあなんで、そんな浮かない顔してるの」
引き下がらない朋也の追及に、美空は口ごもった。
思わず両手を握り合わせる。その冷たさに、自分でも驚いた。
「うん……」
どう説明すればいいのか、美空は言葉を探しあぐねる。
隣にいるのは、美空のコンプレックスを嫌というほど刺激してくれた相手だ。乗り越えたとはいえ、今の自分が卑屈にならない自信がない。
「すごく情けない話なんだけど」
まだ結婚すると決まったわけじゃない。朋也にプレッシャーをかけないで。
そういった思いが頭をよぎるよりも先に、別の感情が胸を塞いでいく。
紙のカップを持つ手が、かすかに震えた。
気づいた朋也が呼ぶ声が、かろうじて美空を正気に返らせる。
上手く笑って席に戻れたかどうか、自分ではよくわからなかった。
ボタンひとつで採光量を変えられる小さな窓から、ぐんぐんと高度を増す空を眺める。
夕暮れどきの便から見おろす大阪の空は、なぜかもの悲しく見えた。母とよく見た空だ。ぼんやりとしていると、膝を軽く叩かれた。
「ずっと上の空だ」
美空は視線を機内に戻した。
「あ……ごめん。そんなつもりじゃなくて」
「謝る必要はないけど、気にはなる。昼間、お父さんと話してたときから様子がおかしかったよね。お父さんとなにかあった? それとも俺が先走って息子面したのが、気に食わなかった?」
「そんなこと。父に合わせてくれてありがとう」
「じゃあなんで、そんな浮かない顔してるの」
引き下がらない朋也の追及に、美空は口ごもった。
思わず両手を握り合わせる。その冷たさに、自分でも驚いた。
「うん……」
どう説明すればいいのか、美空は言葉を探しあぐねる。
隣にいるのは、美空のコンプレックスを嫌というほど刺激してくれた相手だ。乗り越えたとはいえ、今の自分が卑屈にならない自信がない。
「すごく情けない話なんだけど」



