「質問責めに遭うかもしれないから、適当にあしらって」
「とんでもない。光栄だよ」
背中に手を添えられて、ほっと息をつく。無意識のうちに顔が強張っていたと、そのときになって気づいた。
こうなった以上、実家までわざわざ移動する必要もない。美空たちは父とターミナル内のカフェに入ることにした。
海外のコーヒースタンドを思わせる、すっきりした内装の店内は、半分ほどが埋まっている。ざわめきがどこか華やいで聞こえるのは、ここが旅の出発地点だからだろうか。
先にレジでコーヒーを注文し、奥のテーブル席に腰を落ち着ける。
「あらためまして、美空さんとお付き合いさせていただいています、沖形と――」
「いいよいいよ、そういうのは。それより今日はどっちだった? 32? 14?」
美空の近況を尋ねることすらない。父はただただ、話の通じる相手ができた嬉しさを全開にしている。
美空は朋也と顔を見合わせた。朋也が笑いをこらえている。
「32でしたね。今日も北風が吹いていましたから」
「やはりか。年間で1%とはいうけど、14にはなかなか当たらないものだなあ」
「その1%も春夏が多いですしね」
うんうんと父が腕を組んでうなずく。父も父だが、朋也も朋也だ。今日は客として飛行機を利用したというのにもかかわらず、どちらの滑走路を利用したか見ていたなんて、職業病とでもいうのだろうか。
その後もふたりは、パイロットならではの話題で盛りあがった。その多くは、父が語る話に朋也が合わせてくれているものだったが。
(こうなる予想はしていたけど、なんだか……)
美空はふたりより早く空になったコーヒーカップに目を落とす。ほとんど一方的な父の航空談義はまだまだ終わりそうにない。
しかたない。美空は中座して、レジでコーヒーの追加注文をする。
ところが席へ戻ろうとして足を止めた。
「とんでもない。光栄だよ」
背中に手を添えられて、ほっと息をつく。無意識のうちに顔が強張っていたと、そのときになって気づいた。
こうなった以上、実家までわざわざ移動する必要もない。美空たちは父とターミナル内のカフェに入ることにした。
海外のコーヒースタンドを思わせる、すっきりした内装の店内は、半分ほどが埋まっている。ざわめきがどこか華やいで聞こえるのは、ここが旅の出発地点だからだろうか。
先にレジでコーヒーを注文し、奥のテーブル席に腰を落ち着ける。
「あらためまして、美空さんとお付き合いさせていただいています、沖形と――」
「いいよいいよ、そういうのは。それより今日はどっちだった? 32? 14?」
美空の近況を尋ねることすらない。父はただただ、話の通じる相手ができた嬉しさを全開にしている。
美空は朋也と顔を見合わせた。朋也が笑いをこらえている。
「32でしたね。今日も北風が吹いていましたから」
「やはりか。年間で1%とはいうけど、14にはなかなか当たらないものだなあ」
「その1%も春夏が多いですしね」
うんうんと父が腕を組んでうなずく。父も父だが、朋也も朋也だ。今日は客として飛行機を利用したというのにもかかわらず、どちらの滑走路を利用したか見ていたなんて、職業病とでもいうのだろうか。
その後もふたりは、パイロットならではの話題で盛りあがった。その多くは、父が語る話に朋也が合わせてくれているものだったが。
(こうなる予想はしていたけど、なんだか……)
美空はふたりより早く空になったコーヒーカップに目を落とす。ほとんど一方的な父の航空談義はまだまだ終わりそうにない。
しかたない。美空は中座して、レジでコーヒーの追加注文をする。
ところが席へ戻ろうとして足を止めた。



