一瞬の沈黙のあと慌てて取りつくろったものの、「美空?」とけげんそうに言う父の声が、今もまだ耳に貼りついている。
朋也自身にはまったく関係のない事情ながら、父に会わせるのは気が重かった。しかし、避けて通れない。
物思いに沈みかけた美空を、朋也の声が引き戻した。
「俺こそ、美空のお父さんにきちんと挨拶させて。いずれ、うちの家族にも会ってよ」
ほっとして美空はうつむく。
朋也が自身の胸に引き寄せてくれなかったら、歪んだ顔を見せていたかもしれなかった。
羽田空港には及ばないものの、大阪国際空港――通称、伊丹空港も国内屈指の混雑を誇る空港だ。
「北風が吹くことが多いから、伊丹で使用される滑走路は主にRunway 32の北向きの進行方向だね。たまに管制から14を指定されると『おっ』と思う」
伊丹空港には長短二本の滑走路が平行に走っている。A滑走路は14L/32R、B滑走路は14R/32L。
ちなみに二桁の数字は滑走路が向いている方角を表している。真北が36、32と14では進入方向が百八十度反対になることを示す。
「パイロット泣かせ?」
「いや、慣れないというだけで、俺はレアケースのほうが燃える」
到着ゲートを抜け、伊丹空港のロビーを歩きながら朋也が目を輝かせた。
美空の実家から近いのは神戸空港だが、神戸—羽田便は本数が少ない。そのため、今日は伊丹を利用した。
正月も帰省できなかった美空のために、朋也が実家に訪問する都合をつけてくれたのだ。そのこと自体は嬉しい……が。
「朋也くん! 美空も久しぶり」
やはり、と美空は頭を抱えた。あの父のことだから、実家で待ってなどいられないだろうとは思っていたが、伊丹空港までやってくるとは。
おそるおそる隣の朋也をうかがうと、微苦笑が返ってくる。
「お父さんも、根っからのパイロットだね」
朋也自身にはまったく関係のない事情ながら、父に会わせるのは気が重かった。しかし、避けて通れない。
物思いに沈みかけた美空を、朋也の声が引き戻した。
「俺こそ、美空のお父さんにきちんと挨拶させて。いずれ、うちの家族にも会ってよ」
ほっとして美空はうつむく。
朋也が自身の胸に引き寄せてくれなかったら、歪んだ顔を見せていたかもしれなかった。
羽田空港には及ばないものの、大阪国際空港――通称、伊丹空港も国内屈指の混雑を誇る空港だ。
「北風が吹くことが多いから、伊丹で使用される滑走路は主にRunway 32の北向きの進行方向だね。たまに管制から14を指定されると『おっ』と思う」
伊丹空港には長短二本の滑走路が平行に走っている。A滑走路は14L/32R、B滑走路は14R/32L。
ちなみに二桁の数字は滑走路が向いている方角を表している。真北が36、32と14では進入方向が百八十度反対になることを示す。
「パイロット泣かせ?」
「いや、慣れないというだけで、俺はレアケースのほうが燃える」
到着ゲートを抜け、伊丹空港のロビーを歩きながら朋也が目を輝かせた。
美空の実家から近いのは神戸空港だが、神戸—羽田便は本数が少ない。そのため、今日は伊丹を利用した。
正月も帰省できなかった美空のために、朋也が実家に訪問する都合をつけてくれたのだ。そのこと自体は嬉しい……が。
「朋也くん! 美空も久しぶり」
やはり、と美空は頭を抱えた。あの父のことだから、実家で待ってなどいられないだろうとは思っていたが、伊丹空港までやってくるとは。
おそるおそる隣の朋也をうかがうと、微苦笑が返ってくる。
「お父さんも、根っからのパイロットだね」



