ありがたいことに、一月の引越しはシーズンオフにあたるのか、思ったよりもすんなりと終わった。
美空の荷物が少なかったせいもあるだろう。家電も調度類もほとんど処分したので、あとはベッドとチェスト、そして細々としたものだけ。2トントラック一台でじゅうぶん足りる荷物は、あっというまに朋也の部屋へ運びこまれていった。
「さて、食器をどこに置かせてもらおうかな」
引越し業者が帰った部屋の中で、美空は段ボールのひとつを開梱した。
朋也は当初、今日は身体検査だけだからと引越しに立ち会うつもりでいてくれたが、そのまま本社に呼ばれたという。戻りは遅くなりそうだった。
緩衝材代わりの紙に包んだ食器を作業台に出し、背面の吊り戸棚を開ける。
朋也の部屋のキッチンは、ファミリー層向けなのか広々としている。しかし片側だけ壁に接したペニンシュラキッチンは、朋也のひとり暮らしだったからかほとんど使われた形跡がなかった。吊り戸棚の中も、もらいものらしき深皿のセットくらいしか見当たらない。普段使いの食器は、作りつけの食洗機に入ったまま。
「うん、この吊り戸棚に置かせてもらって……っと」
持ちこんだ皿を手に目いっぱい背伸びをするも、指先がようやく届くという有様だ。戸棚の深皿を端に寄せないと置けなそうだ。
いったん自分の皿を作業台に戻し、美空は深皿を寄せようとふたたびつま先立つ。が、あと少しのところで深皿に手が届かない。
と、うしろから急に手が伸びてきて、深皿がひょいと取りあげられた。
「これ?」
「あ、うん、端に寄せてくれたら。……おかえりなさい、早かった? 気づかなかった」
「美空が家にいると思うと、急ぎ足にもなるよね」
朋也は顔をほころばせると、五枚重ねた深皿を戸棚に戻して端に寄せた。真上から覆い被されるような姿勢に、美空はひとりどぎまぎしてしまう。
美空の荷物が少なかったせいもあるだろう。家電も調度類もほとんど処分したので、あとはベッドとチェスト、そして細々としたものだけ。2トントラック一台でじゅうぶん足りる荷物は、あっというまに朋也の部屋へ運びこまれていった。
「さて、食器をどこに置かせてもらおうかな」
引越し業者が帰った部屋の中で、美空は段ボールのひとつを開梱した。
朋也は当初、今日は身体検査だけだからと引越しに立ち会うつもりでいてくれたが、そのまま本社に呼ばれたという。戻りは遅くなりそうだった。
緩衝材代わりの紙に包んだ食器を作業台に出し、背面の吊り戸棚を開ける。
朋也の部屋のキッチンは、ファミリー層向けなのか広々としている。しかし片側だけ壁に接したペニンシュラキッチンは、朋也のひとり暮らしだったからかほとんど使われた形跡がなかった。吊り戸棚の中も、もらいものらしき深皿のセットくらいしか見当たらない。普段使いの食器は、作りつけの食洗機に入ったまま。
「うん、この吊り戸棚に置かせてもらって……っと」
持ちこんだ皿を手に目いっぱい背伸びをするも、指先がようやく届くという有様だ。戸棚の深皿を端に寄せないと置けなそうだ。
いったん自分の皿を作業台に戻し、美空は深皿を寄せようとふたたびつま先立つ。が、あと少しのところで深皿に手が届かない。
と、うしろから急に手が伸びてきて、深皿がひょいと取りあげられた。
「これ?」
「あ、うん、端に寄せてくれたら。……おかえりなさい、早かった? 気づかなかった」
「美空が家にいると思うと、急ぎ足にもなるよね」
朋也は顔をほころばせると、五枚重ねた深皿を戸棚に戻して端に寄せた。真上から覆い被されるような姿勢に、美空はひとりどぎまぎしてしまう。



