大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが


「偶然見かけたんだ。これに反応するのは一種の職業病かもしれない」

 写真は写真だったが、そこに写っていたのはコクピットでも滑走路の様子でもない。車だ。
 ごく一般的なSUVで、黒色の車体も珍しいものではない。手前に横断歩道が映りこんでいるので、信号待ちしていたのだろう。
 だが、いったいななにが……と思いかけた美空は「あっ」と声を上げた。写真の車のナンバーが「・787」なのだ。
 朋也を見ると、悪戯の成功を喜ぶ少年めいた顔が返ってきた。

「見かけると、ラッキーって思うんだよね。実際には、真逆の展開になったけど」
「あの日、これを見せようとしてくれてたの? ええ? ちょっと……ふふっ」
「いや、これは見せたくなるでしょ」
「うん、そうなんだけど……ふふっ、ふふふ」

 朋也の意外な一面に、抑えようとしたはずの笑いが漏れる。

(想像もつかなかったな……)

 なにを言っても太刀打ちできないほど冷静で頭が切れて、ときには冷淡とさえ思えるほど取り澄ました態度の裏に、こんなかわいげがあるなど。
 出会ったときの印象がガラガラと崩れていく。もちろん、いい意味で。

「わたしも、これからどこに行ってもこのナンバーを探しそう」
「じゃあそのたびに、俺を思い出すところまでをセットにすること」

 少年みたいなところもあるんだ――とこっそり微笑ましく思ったのもつかのまだ。
 色気を孕んだ目に、美空はどきりと心臓を跳ねさせる。少年なんて、とんでもない。
 少年めいた一面で美空の油断を誘う、大人の男だ。
 思い出すどころか、朋也を忘れる暇もない。とはなんだか恥ずかしくて言わないでおいた。