大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 その証拠に、どこか拗ねた風にしつつも朋也の顔が笑っていた。知ってるくせに、あえて尋ねないでほしい。

「も、もちろん嬉しい……よ。でも、疲れてない?」
「たった今、燃料補給が完了したところ」

 目元を甘くした朋也に腕を引かれ、隣に腰かける。繋がれた手が離れない。
 朋也の手はすらりとして指が長い。
 その指が、戯れめいた動きで、美空の手の甲をくすぐった。朋也が帰ったあとの仕事では、この感触を何度も思い出して顔を熱くしてしまうのが目に見えている。

「戻りは、明後日だっけ?」
「そう。これからシドニーに飛んで、ステイしてから戻る。お土産買ってくるよ。なにがいい?」
「んー、写真がいいな。とも……沖形さんが見た景色を、わたしも見たい」

 朋也と言いそうになり、美空は言い直した。ここは職場だ。どこで誰に聞かれるかわからない。朋也と付き合っていることを隠すつもりはないものの、仕事がおざなりになっているように見られるのは避けたい。
 思わず休憩室を見回したとき、頬に朋也の唇がかすめた。

「なっ! ここ職場……!」
「明日の分も補給しないといけないから。そうだ、写真で思い出した。前に見せたいものがあると言ったの、覚えてる?」

 美空は虚を突かれて目をまたたかせた。
 空港へ朋也に会いにいった日のことだと、遅れて気がついた。あのとき朋也から逃げ出した美空は、見せると言われたものも見ないままだった。
 朋也が制服のジャケットから、スマホを取り出して操作する。ひょっとして、また滑走路からの景色を写した写真だろうか。
 写真なら、美空が好きだと言った朝空かもしれない。あるいは朋也の好きな夜景か。
 そう思って朋也のスマホを覗きこんだ美空はあっけに取られた。