大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 朋也はいくつかのアラカルトとともにノンアルコールビールを注文した。明日もフライトだろうか。
 と、美空の視線に気づいた朋也が否定した。

「オフではあるけど、今夜はやめておくよ。気分よく飲めるのがわかっているから、間違いなく飲み過ぎる。美空は気にせず飲んで」

 気分よく飲めそうというなら、美空もおなじだ。すでに心が浮き立っている。
 しかし美空は酒に強くない。笑って遠慮し、おなじものを頼んだ。
 ほどなく飲み物が運ばれてきて、さっそく乾杯する。
 アルコールでなくても心がふわふわするのは、やっぱり朋也が隣にいるからだと思う。

「沖形さんは、しばらくフライトが続いてましたよね。明日はどうぞゆっくり休んでください」
「――名前で呼んでよ」
「え」
「俺も名前で呼ばれたい。あ、知らない? 朋也ね」
「〜〜〜っ、知らないわけないじゃないですか。でもあの、やっぱりこれってそういう……えっと、ようするにデートだと、思っていいんでしょうか……?」

 美空が目を泳がせながら思いきって確認すると、朋也が唖然としたあとで噴き出した。

「デートだと思っていたのは俺だけだった? 傷つくな。それとも美空の中で俺はまだ、ただの同僚なの?」
「そんなつもりは……ただ、実感がまだなくて」
「そう? じゃあ俺の次のミッションは、美空が実感を得られるように努力することかな」
 
 愉しそうに言う朋也に肩が小さく跳ねたとき、鼻をくすぐる匂いとともに彩り豊かな料理が運ばれてきた。
 カツオのカルパッチョに、特製のジェノベーゼソースをかけたもの。焼きおにぎりをアレンジしたブルスケッタ。それらを始めとして、和と洋のテイストがミックスされた料理がタイミングよく運ばれてくる。
 醤油味が恋しかったのだと朋也が苦笑気味に打ち明けたとき、だしぬけに美空は彼の恋人になったのだと実感した。