由良君は離さない

由良君と恋人になったら
深い関係を築いたら


自分もああなるんじゃないかって
恐怖心がある。


大好きだったはずの相手を、嫌いになる自分。


想像できない。


けど、私は『あの人』の娘だから。




『お母さんに、そっくりだね』




呪いのように
耳に、記憶に、刻み付けられた言葉。



「…」



梓に気づかれないように、うつむいて
ぐっと、下唇を噛む。



口の中にじんわりと鉄の味が広がる。




……大丈夫。




自分に言い聞かせるように、心の中で呟く。



この境界線を越えなければ
『あんな風』に、誰かを
由良君を傷付けることはないんだから。