由良君は離さない

「…梓は、何も言わないんだね」

「?なにが?」

「私と、由良君のこと」



好き合ってるのに
付き合わないのはおかしいとか

両想いなんだから
付き合えばいいのにとか


そういう言葉を梓の口から聞いた事は
これまで、一度もない。



「綴と由良君がお互い納得してるなら
別に良いと思うけど」

「そっか」



「ただ…」と、梓は読んでいた本を閉じて
私に聞いてきた。



「綴さ、恋愛感情って認めてて
由良君の気持ちも同じって分かってて
言動をセーブしてるのは、なんで?」



…。



「本当は、もっと深く触れ合いたいって
思ってるのに、それをしないのはなんで?」



手を繋いだり、ハグ以上はしない理由。



「由良君に、自分からは絶対
「好き」って言わないのは、どうして?」



自分の口からは、愛の言葉を伝えない理由。




そこを越えてしまったら


明言してしまったら


後戻りできなくなるから。