由良君は離さない

『………由良君』

『何やってるの』

『…』



やってきたのが先生じゃないことに
ほっとしつつ、不思議そうな表情を浮かべて
私を見おろす由良君に、気まずい顔を返す。



『ほら、帰るよ』



帰る方向が同じ由良君とは
小学生の頃から、いつも一緒に帰ってた。


けど、今日は先に帰っていいからと
メッセージを送っていた。


だけど、それを不審に思ったのか
由良君は、ずっと私を探していた様子だ。




『……帰りたくない』

『鍵、閉められちゃうよ』

『いいの。今日は学校に泊まるの』



頑なに帰宅を拒否する私に
隣にしゃがみこんだ由良君が聞いてきた。



『……綴の母さん、帰ってきたの?』

『…』



何ヵ月も家を留守にしていたのに
数日前、あの人は男の人を連れて帰ってきた。


前に見た人とは別の男の人。


今回は、おうちデートの気分なのか
ふたりとも、ずっと家にいるから


顔を合わせるのも、姿を見るのも、声を聞くのも
嫌で嫌で仕方なかった私は


学校に寝泊まりするなんて、馬鹿な計画を立てた。



カバンに顔を埋めたまま、無言で頷けば
そういうことか、と由良君は納得した顔を見せた。



『じゃあ、俺の家来ればいい』



由良君のその言葉に、私は目を丸くした。



『……いいの?』

『うん。しばらく、俺の家にいればいいよ』

『でも…』

『一応、うちの父さんと母さん
綴の母さんには連絡させて貰うけど、いい?』

『……由良君、嫌な思いするかも』

『気にしない』



立ち上がった由良君は、私に手を差し出した。



『ほら、帰ろう』

『……うん』



少し悩んだけど
私は由良君の言葉に甘えることにした。