由良君は離さない

――……




中学一年の夏のこと。



最終下校時間を過ぎ
ほとんどの生徒が学校を後にして
しんと、静まり返った校舎内。


そんな中、私は人目につかないよう
こっそり保健室に忍び込んでいた。



……よし、後はこのまま
先生と警備員さんが帰るまで、やり過ごすだけ…



保健室のベッドの影
入口からは死角になっているそこで
抱き締めるようにカバンを抱えて座り込む。



えっと…


外靴は持ってきたし、夜ごはんと朝ごはん
後は着替えと、懐中電灯…


うん。必要なもの、ちゃんと全部入ってる。



カバンの中身を確認していると
ガラリと保健室のドアが開いて、体が跳ねた。



……嘘っ、誰か来た…?!



保健の先生は帰ったし
見回りの時間にしては、早すぎる…


想定外の出来事に内心慌てながらも
私は、バレないように息を殺して、身を潜める。



……こっち、来ないで…



近付いてくる足音に
心臓が、バクバクとうるさく騒ぐ。



コツコツコツ…



来ないで来ないでと祈るものの
足音はまっすぐにこっちに近付いてくる。



コツ…



すぐそばで止まった足音。



もうだめだと、ぎゅっと目をつぶって
怒られる覚悟を決めた。



だけど



『綴』



降ってきたのは耳なじみの深い声。


びっくりして顔を上げれば
そこには由良君が立っていた。