「……ッ!!は……、うそだろ…。」
だから、あの日……高1の夏休み明け1日目に漣空の姿を見たとき、心臓が止まったんじゃないかって言うほど衝撃を受けた。
……あいつ…、死んだんじゃ………?
「……っ、漣空…!!」
思わず叫んだが、あいつの耳には届かなかったようだった。
一瞬こちらを振り向いたが、俺を認識することなく前を向き直し教室の方へ歩いていってしまった。
………もしかしたら、漣空も記憶がないのかもしれない
そして……そのなんとなくの予感は当たっていた。
あとからあいつを尋ねたが一切俺に気づかず、そして、恋暖にさえも目をくれなかったのだ。
その上、あいつは人が変わったようにガラが悪くなっていた。
あとから聞けば、火事の後引き取られた彪乃家では居場所もなく生きづらさを感じ、何もかも嫌になった漣空は暴力をし裏の世界に踏み入れてしまった、らしい。
それが過去、そして去年までのお話。
でもそんな話が今年になって急展開を迎えるなんて思ってもいなかった。
俺にとって全てが予想外だった。
変に2人の生活を壊したくなかった俺はずっと2人を引き合わせないような立ち回りをしていた。
皇帝制度を知らなかったのは別として、恋暖と漣空が学校で出会わなかったのは、全部俺が仕組んでいたからだ。
万が一他人として出会った2人が……許されざる関係になってしまったら……。
そう考えたら、真実を打ち明けるより前に俺は2人を遠ざけることを選んだ。
だから……
だから、なおさらあの日。
恋暖と漣空がぶつかり、恋暖が喧嘩をふっかけたことは恐ろしい運命を感じた。
神様は何があろうと2人を引き合わせようとしているようだった。
あの日、あの2人を見て背筋を走った悪寒は今でも忘れられない。言葉に出来ないほどの恐怖が体中を襲った。



