原因は夫婦の愛情のズレ。
お互い愛し合っているのに、何処かでボタンをかけ違えたようにズレてしまって修復不可能な溝ができた。
これが歪な形の愛を作った発端だった。
仲が良くて羨ましいと評判だった2人はいつの日か変わり果て、喧嘩しあい、時に暴力をすることで愛を確認しあっていた。
最終的に精神的、肉体的にかなりぼろぼろになるほどだったらしい。
しかし、ぼろぼろになってもお互いを手離すことは絶対になかった。
そのせいで、なおさら愛が歪み、狂愛になってゆく。
愛情の量が溢れすぎて憎みへと変わり果てていた。
……そして、その結果、全てが爆発したとき起こったのが一家心中だった。
なんで……こんなこと起こしたんだ……なんて責めたくもなったが今になってみれば納得できるような気がした。
これは俺の予想でしかないが……多分愛し合っていた恋暖と漣空の両親は全てをリセットしたかったんじゃないかと思う。
……出会って、恋に落ちて、プロポーズをし、されて、結婚し子供を産んだ。
この幸せだった瞬間を、ただ純粋に綺麗な恋に落ちていた日々をもう一度やり直すために………。
だから2人は大切なものを炎で燃やし、灰にして全てを返すことに決めたのだと思った。
そしてそれにショックを受け、火事…いや全てを壊した炎に対して恐怖を感じた恋暖は記憶喪失になったんだろう。
これが隠されたあの火事の真実だった。
……だから、漣空が救出されたという情報は全くのデマであの火事に巻き込まれて亡くなったのかもしれない。
恋暖が助かったのは奇跡だったんだ、一人ぼっちになってしまった恋暖をこれからは俺が支えない、そう言い聞かせて、無理やり漣空のことを忘れて前を向こうとした。



