あの最悪な事件から数日。
俺は親を通じて奇跡的に2人が助かったと聞いて慌てて病院に向かったのだ。
「……っはぁ、れのん……よかった…。大丈夫…?」
慌てすぎてノックもなしに入れば、目の前にはほとんど外傷もなくベッドに座っている恋暖の姿があった。
……よかった。
本当に……よかった、近くに漣空もいるのだろうか?
しかし、こう思ったのも束の間。
「大丈夫?れのん。」
「………?」
俺の言葉にきょとんとした顔を浮かべた恋暖。
「……っ、え、れのん……?」
「……ごめんなさい。あなた…、誰……?」
「……ッ!!!」
…俺は絶望に近い感情を抱いた。
まるで落とされて、引き上げられた直後に強引に突き落とされるような感覚。
火事のショックで恋暖は記憶を失ってしまった。
火事のことも、何でここにいるのかも、そして両親のことや双子の漣空のことさえも忘れていたのだった………。
そして……救出されたはずの漣空の姿さえも見つけることができなかった。



