『……ん、おはよ…。元気だね…、恋暖。』
眠たい目をこすりながら起き上がる。
『うんっ!おはよ、あまね!!遊ぼ!!』
問答無用で高い大きな声を上げる恋暖にやっと頭が覚醒してきた。
『……え、今ごろだけどなんで2人ともいるの?』
今日は土曜日。
いつもなら2人は親と出かけるか、習い事に行ってるかで家にいることはなく、俺は1人で寂しさに耐えてやり過ごす日なのに……。
『んー?あまねとあそぶためっ!今日はお母さんとお父さんもおしごとでいないの!』
『……へぇ。』
喜びを誤魔化すように返事をしたら、かなりそっけなくなってしまった。
……だから捻くれて可愛くない子どもだって言われんだよ。
内心ズキズキと傷を疼かせていると、漣空の何を考えているのか全くわからないクールな瞳がこちらを向いた。
その澄んだ瞳で、こいつだけは俺の全てを見透かしているように見えた。
………こんなことしてたら、そろそろ離れていきそうだな2人とも。
何を言われるか身構えていたのに漣空は全てを見逃し、俺にいたずらっ子みたいな笑みを見せて恋暖を指差した。
『で、何でもいいけど。あまね、れのんがうるさいからさっさと遊びにいこ。多分そのうちうるさすぎてこの家にヒビが入るかもよ。』
『え!!?ひどくない〜〜っ?そんなうるさくないもんねっ!』
漣空の一言で2人の喧嘩はすぐに始まった。まぁほとんど恋暖がわーわー騒ぎ立ててるだけなんだけど。
でも、それだけで部屋が一気に賑やかになって寂しさもなくなってしまう。
楽しくなってしまった俺は、
『……けっきょく2人ともうるさい。』
そうツッコめば。
『『うるさくない!』』
毎回ハモった声が返ってくる。
『ふはは……っ!くく…っ、はは…っ!』
思わずらしくなく大声をあげて笑ってしまった。
……やっぱ、2人といると俺は本当の俺でいられるんだ。
3人で過ごした毎日、これが俺にとっての一番の思い出。
それが再起不能なくらいに壊れてしまうなんて思ってもいなかった。
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
「……は…?」
口からこぼれ落ちたのは吐息に近い乾いた声。
恐怖と混乱が混じった声だった。



