「幼い時をよく覚えてないから分かんないけど、多分捨てられた。気づいた時には引き取られた家で虐げられながら生きてきた。」
「……っ。」
わずかに歪んだように見えた表情を見た瞬間、私の背筋には悪寒が走った。
どれだけ真っ暗闇の世界を生きてきたのだろうか……あのとき、私だってこの世で1番辛いのは私だとか思ってたけど……そんなのあるはずなかった。
「誰も俺を見てくれなかった……っ、どこにいてもいじめられるか存在しないかのように扱われるかのどっちか。この生きづらさがひどくて…俺は、人を殴ってた。」
……人を殴れば、誰かの瞳に俺自身が映るから。
「最初は他人への八つ当たりっていうか……よくわからなくて感情をコントロールできなくて殴ってたこともあるけど……途中からは誰でもいい、俺を見てって…。」
なんて…残酷で辛い話だろう。
誰にも愛されなくて、承認欲求を満たすために人を殴って……
「でも……結局、人を殴っても得られるものはなくて、人を傷つけたって証だけが残って。
暴力なんてしたくもないのにやめられなく
て……。
結局は、ただ愛されたかっただけなのに。」
「……っ、…」
やっぱり、不器用じゃん……!ばか…っ。
なんで…なんで……?
胸が苦しくて私が泣きたくなった。
「フッ…俺の存在を知る人がいないこの学校来てやり直せると思った。…バカみたいに友達作って楽しむことも想像してたのに、初日から喧嘩ふっかけられて、イラついてつい殴ったらこんな有り様。」
……やっぱ、俺に光は合わねぇよな。
なんて開いた手のひらをぎゅっと握りしめ、話を締めるように言葉を落とす。
「………だよ…っ、」
「え?」



