僕がいつも身に付けている、鈴の付いた耳飾りが音を立てる。

この音は、僕ら四神にしか聞こえない、特別なもの。

――チリン

怪異が現れた合図だ。

「……僕、索敵に行ってくる」

術を使って、前世の衣装を身にまとえば、3人は「行ってらっしゃい」と前世の衣装を身にまといながら返してくる。

この格好になると、怪異と同じように人の目には見えなくなる。

窓を開けて、僕らの住む一軒家を囲むように建つ塀の上に飛び乗った。

服のポケットから、閉じた状態の赤い扇子を取り出す。四神の使う術の殆どを閉じ込めた不思議な扇子。留め具の部分には、朱雀の尾をイメージした房のようなものが付いていた。

その扇子を開けば、扇子の一部に火が灯る。一部に火が灯っている間だけ、僕は僕の持つ全ての能力を使うことが出来る。

怪異以外は決して燃えない不思議な火。その火を操るのが、僕の力。

四神によって使える力は違っているものがあって、青龍は水を、僕は火を、白虎は風を、玄武は植物を操る。

火を操る術は僕しか使えないから、それを「朱雀の力」というような言い方をしている。

水を操る術は「青龍の力」、風を操る術は「白虎の力」、植物を操る術は「玄武の力」と言う。

それ以外の術は、そのまま「術」もしくは「魔術」と呼んでいる。

四神の中で、術を使わなくても空を飛べる僕が索敵をして、怪異の情報を皆に共有する。

全ての術が使えるようになったことで、僕の背中にオレンジ色の巨大な羽が生えた。