いつの間にか、この世界に来る前から見慣れた衣装を身にまとった麒麟様が怪異に向かって雷を放つと、怪異はそれを避ける。

僕は、1回フェンスよりも高い位置にまで飛び上がって学校全体を見た後、屋上に着地した。

着地した近くには、颯真がいる。

ずっと抱えていた麒麟様を地面に降ろすと、麒麟様は「この世界で術を使うのは、こんなにも不便なのか」と開いた扇子で口を隠しながら言った。

「仕方ありませんよ。僕らは、ずっとこうやって怪異を倒してきました」

「ほう……わざわざ術を使って、四神の姿になり、扇子を開いて、やっと全ての能力が使えるようになる……それを、お主らは何の疑問も持たずにやっていた、と……」

「……」

僕が何も返せずにいると、颯真が「……えっと……」と話しかけてくる。

「……そういや、この姿で会うのは初めてだったかな。颯真殿」

そう言って、麒麟様は姿勢を正した。

「我が名は麒麟。中央の街の守護神にして、四神たちをまとめている者」

「僕ら四神のリーダー的存在の神様だよ」

僕がそう言うと、麒麟様は「あまりにも四神たちの帰りが遅いものでな。迎えに来たのだ」と言うと鳥型の怪異と向き合う。

「……いいか、朱雀。今から、四神をここに集めろ。こやつが、この間僕が伝えた件の主犯格だ。僕が、足止めをする。急げ」