転校生の凛がやって来た日の放課後、僕がそそくさと教室を出ようとすると、がっしりと誰かに肩を掴まれた。
「朱音くん、一緒に帰らない?」
ゆっくりと振り返ると、そこにいたのは笑顔を浮かべる凛。表情から、逃がさない、と言っているのが分かる。
「あ、ハイ……」
彼と並んで教室を出て、一緒に学校を出る。
人通りの少なくなってきた場所で、ずっと会話のなかった僕らの間に会話が生まれた。
「して、久しいな。朱雀よ」
「……お久しぶりです。麒麟(きりん)様」
麒麟。前世で僕ら四神をまとめていた、雷を操る神様。引きこもりの神様で、あまり姿を見かけなかった記憶がある。
恐らく、凛――麒麟様も前世の記憶があるんだろう。
「他の四神たちは、元気にしとるのか?」
「はい。現在、四神の4人でシェアハウスをしております。青龍と玄武は社会人、白虎は大学生です」
「で、朱雀と僕が高校生……と」
「……あの、麒麟様。一つよろしいですか?」
麒麟様に話しかけると、隣を歩く麒麟様の「ん?なんじゃ?」という声が聞こえてきた。
「どうして、僕にあのメモを見せたのですか?僕に、朱雀としての記憶がない可能性だってあったんですよ」
麒麟様が見せた『今日からよろしく頼む。朱雀』と書かれたメモについて、少し気になったから聞いてみる。



