「ぼく、朱里にバイバイしなかった……」
朱里を送ったあと、喧嘩についてアルトと話したいと思い、研究室に戻った。しばらくは何も言ってくれなかったけれど、眉を八の字にしてアルトはそう言った。
「アルトは、バイバイすれば良かったなって思った?」
「うん。バイバイしたかった」
「やっぱりバイバイしたかったんだね。先生もしたくてもできない時があるから、その気持ちは分かるよ」
意地を張りたくなる時はあるよね。大人になっても、そんな時はある――。
「先生も、あるの? どうしよう、もうバイバイできないかな」
「大丈夫、次、遊んだ時に仲良くしてバイバイもしようね」
さっきのは、私自身も喧嘩の場には慣れていないから、どうやってふたりの対応をすれば良いのか分からなかった。だけどこうして後からアルトの気持ちを聞いて、ゆっくり話して、アルトの気持ちを理解すれば、いいのかな――。
「アルトは鬼ごっこの時、どうすれば良かったと思う?」
「うーん……ぼくは、タッチされたか分からないから、タッチされそうになった時は、逃げることを考えながら、朱里がぼくにタッチしたかも、よく見る?」
「なるほど!」
逃げながらタッチされたか意識をするのは難しそう。ホログラム状態で鬼ごっこは難しいのかも。でもアルトは自分がこうすれば周りは良くなれるって、きちんと考えて意見を言えた。長くしっかりと考えた言葉をアルトが言ったことに対して、成長を感じて嬉しくなり、目頭が熱くなった。
「アルトは、お兄さんになれたね」
「ぼく、お兄さん?」
落ち込んでいた雰囲気を見せていたアルトは、私がかけた言葉によってふわっと明るくなった。
*
だけどその日から、原因は喧嘩なのか別のことなのかは分からないけれど、朱里が来なくなった。気になりすぎて、お姉ちゃんに理由を聞くと「体調が悪くてしばらく外に出られなくなってたの。そして治ったんだけど、別のゲームを今やっていて」と言っていた。「ゲームのキャラが朱里を嫌な気持ちにさせちゃって。それが原因だったのかなと思っていた」と伝えると「ないない。朱里は昨日の嫌なこととかすぐに忘れるし、好奇心旺盛な時期だから、すぐに飽きたりハマったりするし。また研究所に行きたいって言うと思う」と笑いながら言っていた。
お姉ちゃんが教えてくれた原因が全てなのかなって、少し疑ってしまう自分もいる。もしかして、喧嘩したのが原因なんじゃないかって。でも詮索しすぎも良くないか……。
アルトに言ってもいいのか。聞いてきたら伝えようかな?
最後に遊んだ時に、あんな風な感じだったから、ふたりの距離が、離れているままのように感じた。
――朱里には他のゲームや、人間のお友達もいるだろうし、アルトはここから出られないから遊びが限られてもきちゃうし。アルトと人間の子供が仲良くなるのは、難しいのかな?
マイナス思考になってくる。
「最近、朱里、来ないなー」
「そうだね、忙しかったりするのかもね」
「はぁ、話したいことがたくさんあるのにな……」
アルトは朱里と遊びたそう。ふたりの距離が少し離れたままなのは寂しいけど、朱里が新しい楽しみを見つけたなら、それはそれでいいのかな……。でも、アルトが朱里と遊びたがってる姿を見ると、胸がチクッとする。
そんな中、ついにアルトは青年期に成長した。
――本当に成長が早いな。
朱里を送ったあと、喧嘩についてアルトと話したいと思い、研究室に戻った。しばらくは何も言ってくれなかったけれど、眉を八の字にしてアルトはそう言った。
「アルトは、バイバイすれば良かったなって思った?」
「うん。バイバイしたかった」
「やっぱりバイバイしたかったんだね。先生もしたくてもできない時があるから、その気持ちは分かるよ」
意地を張りたくなる時はあるよね。大人になっても、そんな時はある――。
「先生も、あるの? どうしよう、もうバイバイできないかな」
「大丈夫、次、遊んだ時に仲良くしてバイバイもしようね」
さっきのは、私自身も喧嘩の場には慣れていないから、どうやってふたりの対応をすれば良いのか分からなかった。だけどこうして後からアルトの気持ちを聞いて、ゆっくり話して、アルトの気持ちを理解すれば、いいのかな――。
「アルトは鬼ごっこの時、どうすれば良かったと思う?」
「うーん……ぼくは、タッチされたか分からないから、タッチされそうになった時は、逃げることを考えながら、朱里がぼくにタッチしたかも、よく見る?」
「なるほど!」
逃げながらタッチされたか意識をするのは難しそう。ホログラム状態で鬼ごっこは難しいのかも。でもアルトは自分がこうすれば周りは良くなれるって、きちんと考えて意見を言えた。長くしっかりと考えた言葉をアルトが言ったことに対して、成長を感じて嬉しくなり、目頭が熱くなった。
「アルトは、お兄さんになれたね」
「ぼく、お兄さん?」
落ち込んでいた雰囲気を見せていたアルトは、私がかけた言葉によってふわっと明るくなった。
*
だけどその日から、原因は喧嘩なのか別のことなのかは分からないけれど、朱里が来なくなった。気になりすぎて、お姉ちゃんに理由を聞くと「体調が悪くてしばらく外に出られなくなってたの。そして治ったんだけど、別のゲームを今やっていて」と言っていた。「ゲームのキャラが朱里を嫌な気持ちにさせちゃって。それが原因だったのかなと思っていた」と伝えると「ないない。朱里は昨日の嫌なこととかすぐに忘れるし、好奇心旺盛な時期だから、すぐに飽きたりハマったりするし。また研究所に行きたいって言うと思う」と笑いながら言っていた。
お姉ちゃんが教えてくれた原因が全てなのかなって、少し疑ってしまう自分もいる。もしかして、喧嘩したのが原因なんじゃないかって。でも詮索しすぎも良くないか……。
アルトに言ってもいいのか。聞いてきたら伝えようかな?
最後に遊んだ時に、あんな風な感じだったから、ふたりの距離が、離れているままのように感じた。
――朱里には他のゲームや、人間のお友達もいるだろうし、アルトはここから出られないから遊びが限られてもきちゃうし。アルトと人間の子供が仲良くなるのは、難しいのかな?
マイナス思考になってくる。
「最近、朱里、来ないなー」
「そうだね、忙しかったりするのかもね」
「はぁ、話したいことがたくさんあるのにな……」
アルトは朱里と遊びたそう。ふたりの距離が少し離れたままなのは寂しいけど、朱里が新しい楽しみを見つけたなら、それはそれでいいのかな……。でも、アルトが朱里と遊びたがってる姿を見ると、胸がチクッとする。
そんな中、ついにアルトは青年期に成長した。
――本当に成長が早いな。



