そして少年期に成長したアルト。身長は少し伸び、銀髪はさらっと少し短くなった。相変わらずお顔はとても可愛らしい。

無邪気で天真爛漫な性格になり、感情がそのまま表情や動きに現れがちな傾向だ。素直に気持ちを伝えられる性格になったのはとても良いことだと思う。でも時々ワガママで私は振り回される。その瞬間は正直うわっと感じることもあるけれど、大体ワガママも含めて全部可愛いなと思える。注意しすぎても放置しすぎてもアルトにとっては良くないと思うから、どうやって接すれば良いのか分からないこともある。

そう考え込んでしまうのはきっと、アルトの未来をきちんと考えているからなのかな?

 子育てって本当に難しい。

 そして、子供たちふたりはニュータイプ研究室で遊び続ける日々を送っていた。

アルトの成長は人間よりもはるかに早いから、朱里とアルトの年齢差は開いていく。そのうち私の年齢も越えていくのかな?と思うと、とても不思議な気持ちになる。

「アルト、このドリルのこたえ、あってる?」
「合ってるよ」

「朱里、しりとりしようか」
「うん、やる!」

 いつの間にかアルトがリードして朱里に勉強を教えたり、何をして遊ぼうかを提案したりするようになっていった。しばらくそんな感じで仲良くすごしていたけれども――。

「ぼくの勝ちだ!」
「あかりのかちだよ」

 ふたりは喧嘩をした。どうやら原因は、ニュータイプ研究室で、ホログラムのアルトと朱里が一分間の鬼ごっこをしていた時に、鬼の朱里が逃げるアルトにタッチしたかどうかで揉めているらしい。

たしかにホログラムのアルトは透けていて、触れることはできないから、タッチしたか分からない時はあるよね……北斗さんは用事でいないから、判定できる人は私しかいない。でも私は、ちょうど違うところを見ていた。

「あかり、もうここに、こないから」
「いいもーん! ふーんだ!」

 ふたりが喧嘩をしたのは初めてだから、仲直りできるのかが気になる。時間があればいつの間にか仲直りしているかな?って思ったけれど、もう朱里が帰る時間になってしまっていた。

 お互いにぷんとして、無言で別れる雰囲気だったから「アルト、朱里にバイバイは?」と聞いた。だけどアルトは口を膨らませてぷいっと横を向いた。これは意地を張って最後までバイバイしないやつだなと悟りながら朱里に視線を向けた。

「アルト、バイバイ」と朱里は手を振った。だけどアルトは相変わらず、ぷんっとしたままだ。私は心の中で深くため息をつき、朱里を送るために研究所を出た。