当日の朝、私は朱里を家まで迎えに行った。
「私、今日久しぶりにネイルサロンに行ってくる。楽しみ~。朱里も楽しんできてね」と、お姉ちゃんはテンション高めに朱里を送り出した。
そう、お姉ちゃんには久しぶりの休日の一人時間を満喫してもらう。私にはまだ子供がいなくて分からないけれど、最近アルトのために購入した育児の本には『仕事と家事育児に忙しいお母さんは、休息も大切』と書いてあった。アルトが嬉しそうだと私も嬉しいし、この作戦はアルトが感情のあるAIだとバレなければ、実はみんな幸せになれる?
私と朱里はミライ創造研究所に着いた。ニュータイプ研究室の中には北斗さんがいて、アルトが大きなモニター画面に映っていた。
「アルト、わたしのいちばんすきなえほんもってきたよ」と、朱里は自分のリュックの中をあさる。そして大量のひよこちゃんが表紙に載った絵本をモニター画面のアルトに見せた。それからお気に入りの猫のぬいぐるみやビーズの腕輪も。
「朱里ちゃん、アルトを外に出そうか?」
「アルト、画面から出てこれるの? 出てきて!」
北斗さんが尋ねると、朱里は目を輝かせながら声のトーンを上げ、そう言った。
そう、アルトはモニターの外に出てくることができる。特殊な投影機を使って、アルトの姿を立体化、つまりホログラムにして。触れられないのは少し切ないけれど、本当に目の前にいるように見えて、モニター画面でも可愛いアルトの可愛さがさらに増し、たまらない。
アルトが画面から出てきた。私が手早く準備したくつろぎ用のマットの上に、ふたりは並んだ。朱里がそこで本を広げる。
「え、ほん」
相変わらずほわほわとしているアルトは、絵本を指さした。
「よんであげる! ぴよぴよ、しまのぴよこちゃん……」
「ぴよ、ぴよ。かわいい」
なんだ、このまぶしい光景は!
可愛すぎて動悸がしてきた。
朱里はゆっくりと絵本を読んでいる。ホログラムのアルトは、ほわーっとときめいている雰囲気で、絵本を真剣に見つめていた。このくらいの年齢の子が本を読んでいる姿は胸がキュンとする程に可愛い。間違えた部分を何回も直しながら、一生懸命に読んでいる。そして読むのに疲れたのか、思いがけないところで間をあけて休んだりもしている。小さな子が小さな子に本を読んであげている光景が本当に可愛くて。私も朱里の読む絵本を癒されながら見つめた。
「アルトも読んでみる?」
「ん……よめるか、わからない」
「でも、この前、本を読むお勉強をした時、上手だったよ?」
「……やって、みる」
アルトは決意を固めたのか、キリッとした表情になった。
「朱里、次は私と一緒にアルトが読むのを聞こうね」
「うん、わかった。アルトのよめないところあったらわたしがおしえるから、かなちゃんはおしえないでね」
「おっけー!」
アルトは緊張するようすを見せながら、一生懸命に読み聞かせてくれた。
「そ、うして、ぴよぴよしま、は、またあかるく、なりまし、た」
たどたどしかったけれど最後まできちんと読めたアルト。文字も以前より読めるようになってきていて、成長を感じた。
と、そんなこんなで、ふたりは仲良く過ごしていった。
朱里は色々とアルトの面倒をみたいようだ。アルトも朱里の言うことを素直に聞き、ふたりの関係は良好に思えた。
「私、今日久しぶりにネイルサロンに行ってくる。楽しみ~。朱里も楽しんできてね」と、お姉ちゃんはテンション高めに朱里を送り出した。
そう、お姉ちゃんには久しぶりの休日の一人時間を満喫してもらう。私にはまだ子供がいなくて分からないけれど、最近アルトのために購入した育児の本には『仕事と家事育児に忙しいお母さんは、休息も大切』と書いてあった。アルトが嬉しそうだと私も嬉しいし、この作戦はアルトが感情のあるAIだとバレなければ、実はみんな幸せになれる?
私と朱里はミライ創造研究所に着いた。ニュータイプ研究室の中には北斗さんがいて、アルトが大きなモニター画面に映っていた。
「アルト、わたしのいちばんすきなえほんもってきたよ」と、朱里は自分のリュックの中をあさる。そして大量のひよこちゃんが表紙に載った絵本をモニター画面のアルトに見せた。それからお気に入りの猫のぬいぐるみやビーズの腕輪も。
「朱里ちゃん、アルトを外に出そうか?」
「アルト、画面から出てこれるの? 出てきて!」
北斗さんが尋ねると、朱里は目を輝かせながら声のトーンを上げ、そう言った。
そう、アルトはモニターの外に出てくることができる。特殊な投影機を使って、アルトの姿を立体化、つまりホログラムにして。触れられないのは少し切ないけれど、本当に目の前にいるように見えて、モニター画面でも可愛いアルトの可愛さがさらに増し、たまらない。
アルトが画面から出てきた。私が手早く準備したくつろぎ用のマットの上に、ふたりは並んだ。朱里がそこで本を広げる。
「え、ほん」
相変わらずほわほわとしているアルトは、絵本を指さした。
「よんであげる! ぴよぴよ、しまのぴよこちゃん……」
「ぴよ、ぴよ。かわいい」
なんだ、このまぶしい光景は!
可愛すぎて動悸がしてきた。
朱里はゆっくりと絵本を読んでいる。ホログラムのアルトは、ほわーっとときめいている雰囲気で、絵本を真剣に見つめていた。このくらいの年齢の子が本を読んでいる姿は胸がキュンとする程に可愛い。間違えた部分を何回も直しながら、一生懸命に読んでいる。そして読むのに疲れたのか、思いがけないところで間をあけて休んだりもしている。小さな子が小さな子に本を読んであげている光景が本当に可愛くて。私も朱里の読む絵本を癒されながら見つめた。
「アルトも読んでみる?」
「ん……よめるか、わからない」
「でも、この前、本を読むお勉強をした時、上手だったよ?」
「……やって、みる」
アルトは決意を固めたのか、キリッとした表情になった。
「朱里、次は私と一緒にアルトが読むのを聞こうね」
「うん、わかった。アルトのよめないところあったらわたしがおしえるから、かなちゃんはおしえないでね」
「おっけー!」
アルトは緊張するようすを見せながら、一生懸命に読み聞かせてくれた。
「そ、うして、ぴよぴよしま、は、またあかるく、なりまし、た」
たどたどしかったけれど最後まできちんと読めたアルト。文字も以前より読めるようになってきていて、成長を感じた。
と、そんなこんなで、ふたりは仲良く過ごしていった。
朱里は色々とアルトの面倒をみたいようだ。アルトも朱里の言うことを素直に聞き、ふたりの関係は良好に思えた。



