研究所へ戻ると、アルトは大きなモニター画面に入る。
「アルト、お花綺麗だったね」
「きれい、だった」
「今日はたくさんの人に囲まれたね? 大丈夫だった?」
「うんと、だい、じょぶ。あか、り……」
アルトは何かを言いかけてモジモジし始めた。やっぱりアルトは朱里のことが気になっているのね。言葉が喉に詰まると、私はアルトの頭をモニター越しに撫でた。アルトは「ん……?」と首を傾げる。私は静かにアルトを見つめていた。
「香菜さん」
背後から北斗さんの声がした。振り返ると、いつの間にか入口辺りに立っていた。彼は腕を組みながら穏やかな笑みを浮かべ、私たちを見ていた。いつからいたんだろう。私たちの会話を聞いていたのかな。
――ちょっと相談してみようかな?
私は北斗さんに今日の出来事と、アルトがとても朱里を気にかけていることを伝えた。
「ちょっと、思いついたんだけど」と顎に手を当て下を向き、考えている様子だった北斗さんが、ぱっと顔を上げた。
*
アルトにバイバイした後、ニュータイプ研究室から出ると廊下でひっそり計画を聞いた。
「完全に、AIのゲームだと思い込ませるのですね?」
「そういうことになるね」
AIのゲーム、か……。
ゲームはそんなにやったことはないけれど、私が利用しているAIの中でも感情があるように振る舞うAIはたくさんある。音声アシスタントやAIチャットなんて、今はまだ表面上だけっぽくて無機質だけど話に合わせて言葉を変えてきたりなんかして、常に進化して人間味が帯びてきていたりもする。だから朱里にゲームだと説明しておけば、周りにアルトのことが伝わっても大丈夫かも。だけど、アルトにはきちんと感情がある。果たして感情のないAIと同じだと教えてもよいものか……
北斗さんが立てた計画をまとめると、外ではなく、このニュータイプ研究室内だけで朱里とアルトを交流させるということだった。
後からアルトに「朱里と、お外では難しいけれど、ここで朱里とお話したい?」と尋ねると「うん」とふわりと微笑みながら頷いたので、計画を実行することになった。
『ゲームの中にいる子供のAIと人間の子供は仲良くなれるのか』がテーマの実験の参加者になってもらいたいからという理由を姉に説明し、朱里を誘った。お姉ちゃんは私のことを信用してくれているし、楽しそうだからと、積極的に協力してくれることになった。
お姉ちゃんに嘘をついてしまったことも後ろめたい。私は心の中で何度も謝った。
*
「アルト、お花綺麗だったね」
「きれい、だった」
「今日はたくさんの人に囲まれたね? 大丈夫だった?」
「うんと、だい、じょぶ。あか、り……」
アルトは何かを言いかけてモジモジし始めた。やっぱりアルトは朱里のことが気になっているのね。言葉が喉に詰まると、私はアルトの頭をモニター越しに撫でた。アルトは「ん……?」と首を傾げる。私は静かにアルトを見つめていた。
「香菜さん」
背後から北斗さんの声がした。振り返ると、いつの間にか入口辺りに立っていた。彼は腕を組みながら穏やかな笑みを浮かべ、私たちを見ていた。いつからいたんだろう。私たちの会話を聞いていたのかな。
――ちょっと相談してみようかな?
私は北斗さんに今日の出来事と、アルトがとても朱里を気にかけていることを伝えた。
「ちょっと、思いついたんだけど」と顎に手を当て下を向き、考えている様子だった北斗さんが、ぱっと顔を上げた。
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アルトにバイバイした後、ニュータイプ研究室から出ると廊下でひっそり計画を聞いた。
「完全に、AIのゲームだと思い込ませるのですね?」
「そういうことになるね」
AIのゲーム、か……。
ゲームはそんなにやったことはないけれど、私が利用しているAIの中でも感情があるように振る舞うAIはたくさんある。音声アシスタントやAIチャットなんて、今はまだ表面上だけっぽくて無機質だけど話に合わせて言葉を変えてきたりなんかして、常に進化して人間味が帯びてきていたりもする。だから朱里にゲームだと説明しておけば、周りにアルトのことが伝わっても大丈夫かも。だけど、アルトにはきちんと感情がある。果たして感情のないAIと同じだと教えてもよいものか……
北斗さんが立てた計画をまとめると、外ではなく、このニュータイプ研究室内だけで朱里とアルトを交流させるということだった。
後からアルトに「朱里と、お外では難しいけれど、ここで朱里とお話したい?」と尋ねると「うん」とふわりと微笑みながら頷いたので、計画を実行することになった。
『ゲームの中にいる子供のAIと人間の子供は仲良くなれるのか』がテーマの実験の参加者になってもらいたいからという理由を姉に説明し、朱里を誘った。お姉ちゃんは私のことを信用してくれているし、楽しそうだからと、積極的に協力してくれることになった。
お姉ちゃんに嘘をついてしまったことも後ろめたい。私は心の中で何度も謝った。
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